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幸せ過ぎてどうしよう

日頃お世話になっているお友達、かおりさん(@k_ponbon)が描いてくださいました(ノ*´>ω<)ノ
以前書いた未来話の3人です!


かおりさんハクヨナ+α





モノクロなのに、3人を取り巻く世界の鮮やかな色彩が脳裏に浮かびます。ああ凄いなあと驚嘆すると同時に、幸せであろう家族の姿に涙が……!
かおりさん本当にありがとうございます!



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テーマ : イラスト
ジャンル : アニメ・コミック

『PRAY』 ゼノが緋龍王とハクヨナを想う。ゼノとハクの会話。




蒼天に、金色の星が燃える。



やわらかな陽射しに照らされた淡い金髪を風が遊ぶに任せ、萌葱色に染まる大地に立ち尽くし、蒼いあおい雲ひとつない空を見上げる。

些か小柄な、その見知った姿を視界の先に認めた黒髪の青年は、ゆったりとした歩調で知己に向かった。
肩を並べる数歩手前で立ち止まり、華奢な後姿を眺め遣る。まるで子供の頃に幼馴染に付き合わされる形で読んだ、題名も朧な絵巻物に登場する見知らぬ国の遊牧民のようだと思いながら、青年は豊穣のいろを身に纏った、少年と呼ぶには大層語弊が生じるーーだが見た目は明らかに少年である彼の名を唇に乗せた。

「ゼノ、ここに居たのか」
「ーーん、どうした兄ちゃん」

くるりと振り返り、屈託のない笑顔を惜しげなく晒したゼノは、今度は青年から視線を外し澄み渡る蒼天を見上げた。
ふるりと揺れる淡い黄金色の髪が、まるで流星の軌跡のように快晴の空を彩る。

「あー……休憩だ休憩」
「娘さんは?」
「白蛇が付いてる」
「そっか」

黒髪の青年ーーハクの返答に、ゼノは煌めく星々を宿したような双眸を細め満足気に頷いた。

「兄ちゃん、少し変わったな」
「ーーそうか?」
「うん」

些か怪訝そうに首を傾げる青年に向けて、ゼノは再び満面の笑顔で。

「兄ちゃんがあいつらに娘さんを任せて休憩なんてな」

ーー龍達のこと、信じてくれてありがとな。

ほんの少し照れ臭そうに笑うゼノの、晴れ渡った豊穣の季節の空の色彩をそのまま落とし込んだような瞳を、ハクは己に向けられた謝辞には答えぬまま眺め遣った。

くるくると忙しなく世界を辿る蒼い瞳。輝きに満ちていながら、不思議なほど凪いだそのいろをーー否、いろに宿るこころを、彼は既視感と、それから僅かばかりの違和感を以って覗き込む。

不躾とも取れるハクの視線を気に留める様子もなく、また返答を期待するでもなく再びゼノは雲ひとつない空を仰いだ。

「ーー変わるってのは、いいことだ」

変わらないのは、空だけで充分。

からりとした口調でそう告げる、黄金色の大地に降り注ぐ麗らかな陽射しを掻き集めたような笑顔とはうらはらな双眸の光。

諦観のいろだ、と何故だか疑うこともなくハクは思う。

吹き荒ぶ春風に舞い散る花弁や、篝火に引き寄せられる羽虫や、はらはらと枯れ落ちる朽ちた枝葉の奏でる旋律の如き、優しく穏やかな諦観のいろ。

似て異なるいろを、彼は知っていた。

己が対峙し、斬り捨ててきた者たちが今際の際に此方に向ける強く悲痛な双眸の光。
ともすれば吐き気を催すようなあのいろは、恐怖でも憎しみでも哀しみでもない、絶望のいろなのだと彼は受け止めていた。

いのちへの望みの一切合切を容赦なく断ち切る相手に対する只強い、つよい光を浴び続けてきた高華の雷獣と称された男が終ぞ見ることのなかった静謐ないろが、共に旅をする仲間の瞳の内に確かに存在している。その様を、彼は驚きを以て見詰めていた。

或いは、四肢を斬り落としていくような遣り方でもすればそのいろを目にすることもできたのかも知れない。だが見せしめとして敵に恐怖を与え、結果抑止力の幾許とする戦闘方法は有効ではあっただろうが、そういった戦略は彼や彼の武器の性に合うものではなかった。

「……何を他人事みてえに言ってんだ、お前だってーー」

同じだろう。そう言おうとしたハクは、けれどもその声を発することはしなかった。
同じだなどと、どうして簡単に決め付けることができるのか。途切れた言葉の先を探すことも言い繕うこともせず、かわりに彼は夜の海の深淵を宿したようないろの双眸で、眩い世界の色彩を一身に纏う男の佇まいを只静かに眺め遣った。
経験と時間は人を変える。それはゼノとて然りだろう。殊更彼はただびとからは想像もつかないような、それこそ筆舌に尽くし難い経験と時間を重ねてきたという。

ああ、そうか。
目の前で朗らかな笑顔を顔面に刷く小柄な男は沢山のーーそれこそ数え切れないほどの絶望を重ね、やがて諦観のいろをその双眸に宿したのか。

押し黙ったまま己を見据える青年に、ゼノは笑顔を絶やすことなく軽く肩を竦め小首を傾げてみせた。無造作に伸びた黄金色の髪が彼の動作に合わせて揺れる様は、豊かに実った穀物の穂先が風になびく光景を彷彿させた。

「自分じゃ分かんないけど、色んな体験したからな。兄ちゃんの言う通りかもな」

それから、青年を映す空色の双眸を眩しそうに細めると再び言を紡ぐ。
やわらかで、翳りのない声音で。

「色んな体験ってのは経験になって、経験を積めば最良の選択に近付けるようになる。兄ちゃんも、娘さんも、そうやって変わりながら生きてる。良いことだと思うぞ」
「ーーお前の話じゃなかったのかよ」
「ゼノは、ずっと何もしないで生きてきただけだからなあ」

だから自分じゃ分かんねえし、知り合いとかいねえし。

少し困ったように戯けて答えるゼノに、だがハクには気休めの言葉も慰めの言葉も持ち合わせておらず、それ故僅かに躊躇う表情を浮かべーーしかしそれは一瞬のことで、真っ直ぐに鮮やかな豊穣の色彩を捉えはっきりと告げた。

「ーーそれがお前の、最良の選択だったんだろう?」

何も為さず、この世界に溢れる光のように、過ぎ去る風のように、流れる雲のように。
それが、目紛るしく移りゆく人の世に唯ひとり悠久の時を在り続ける男の最善だったのだろう、とハクは思う。

「うーん、何かするにはゼノには欠けてるモノがあるからなあ」

へらりと笑うゼノの言葉の意味を少しだけ考えて、けれどハクはその答を目の前の相手に求めることはしない。
欠けているモノ。それは、元々の素質や性分ではないだろう。もしも元来の弱点があるならば長い時を生きたゼノは、それだけの体験をしてきた筈だ。
彼の理屈でいうならば体験を経験に昇華させ、最良の選択をーー言い換えれば、弱点を経験で補うなり克服するなりの方法があるだろう。

つまりは、ゼノはその境遇故に何かを喪ったのだ。そう考えるのが自然だとハクは思い、故にゼノに問うことはしなかった。

長く生きた男が喪ったものーーいのちへの執着だろうか、それとも死の恐怖か。
それが何であろうと、恐らくは晴れ渡った空に滲む諦観のいろをもらたしたものなのだろう。

ーー変わらないのは、空だけで充分。
咬み締めるように呟かれた言葉が、青年の脳裏にふと浮かぶ。
緋龍王の時代から変わらない空のいろ。目の前で笑う、龍神の力のかけらを宿した男の瞳のいろ。

「……人生日々勉強だろうが。経験に甘んじて努力怠ってんじゃねえよ」

敢えて風牙の弟分を叱咤するような口調で言ってやれば、ゼノは苦笑いを浮かべ空色の双眸を細めた。
諦観のいろが瞼の奥に隠されたーーそんなことをハクは思う。

「兄ちゃん厳しいなあ、もっと年寄りを労るべきだと思うぞ」
「俺の知ってる年寄りに、そんなんが必要な奴なんざいねえ」

間違いなく己の祖父を基準にしたのだろうハクの発言を、ゼノは見識不足だと口を尖らせ非難しつつ再び空を見上げた。
伸びやかな、愁いを感じさせない男の表情を黒髪の青年は不思議な心持ちで眺め遣る。
絶望を越えた諦観をその身に宿す、長い長い時を生きた彼の笑顔は、まるで幼子のそれのように無邪気なものだ。

死にもせず、老いもしない彼の在り様を羨む者も、厭う者もいただろう。人は、己とは異質な存在への羨望と嫌悪を少なからず持つものだ。

己はどうだろうかと、戯れに考えてみる。
殊更権力者が追い求めがちだという不老不死の夢物語に興味などない。

だが、とハクは思う。
再生可能な身体というものは、単純に魅力的な響きを宿す。死にもせず、傷を負っても忽ち治癒する身体。

ーーもしも自分にその能力が備わったら、俺は確実にあの人を護り切れるだろう。

「兄ちゃん、あんまひとりで背負おうとすんなって言っただろ」

黄龍の能力を羨んだ訳ではない、己の力に自信がない訳でもない。感情の介在しない、単なる仮定としてのハクの思考を読み取ったのか、ゼノは真っ直ぐに紺青の双眸を捉え言葉を重ねた。

「緋龍王の盾は、黄龍の役目だ」

年齢にしては酷く冷静で現実的な彼がそのようなことを戯れであれ考えることに対し少しばかりの違和感を覚えたゼノは、それは彼の自分に向けられた思いであるのだと理解する。

ーー兄ちゃんは、優しいな。

風の部族の気風をそのまま体現した年若い部族長へと胸の内で呟けば、聴こえているかの如く彼は苦々しく端正な顔を歪める。

「録に闘えもしねえ奴を盾になんざ出来るかよ、武人の銘が廃るわーーそれに」

姫さんが泣くからな。

憮然とした表情でぼそりと告げる青年に、ゼノはそうだなあと鷹揚に返した。
ふと、黄龍の能力を知って以来頑なに己を戦場から遠ざけた嘗ての主の姿が何故だか脳裏に浮かぶ。

目の前の青年は、緋龍王ではないというのに。

「……そっか」
「少しは姫さんやユンの気持ちも考えろよ」
「うん、そうだなあ」

彼は、間違いなく緋龍王ではないけれど。
今を生きる緋龍王の魂と、こころに寄り添っているからだろう。だから彼の言葉に緋龍王が重なるのだろうと思い、ゼノはゆるりと黄金の髪を揺らす。

「兄ちゃんは娘さんの護衛だもんなあ」

咬み締めるように紡いだ言葉を、目の前の青年がどういう風に捉えたのかは分からない。だがそれに構うことなく、ゼノはハクから視線を外すと天に向かい気持ち良さそうに大きく伸びをした。

緋龍王のこころを護る相手は、あの時存在したのだろうか?
四龍や、王妃様や王子様は、少しでも彼のこころに寄り添えていたのだろうか?

詮無いことと思いつつも遥か昔へと記憶を辿るゼノの瞳に映し出された蒼天は、何処までも澄み渡り相も変らず清々しいまでの絶望を一面に横たえている。

はやく、時が過ぎればいい。

ゼノは久々にーーそれこそ千年以上振りに、自分以外の者のためにそれを希う。

流れる時は、人のこころを癒す一番の薬なのだという。
王女とその護り手に襲い掛かった悪夢の夜を、ふたりが忘れることはないだろう。
けれど、あの時ふたりが感じたであろうこころを引き裂くような衝撃ーー絶望感は、時間の経過と共に少しずつ消え去っている筈だ。

はやく、忘れてしまえるといい。
そうしたらきっと緋龍王の魂を持つ王女も、彼女の優しい護り手も共に穏やかに笑い合えるだろう。

(俺には、出来ないことだけどな)

時を止めた黄龍の身は、忘却という概念を喪った。
千年以上前の体験を鮮明に紡ぎ続ける己は、絶望を忘れることも出来ずに何時しか他の何かに変貌させてしまったけれど。

ーーこの国を守護する龍神様も同じなのだろうか。

でも、と長い時を生きた黄龍は思う。
人の身を得た緋龍王は、そうではないのだと。

彼の魂が、やすらかであればいい。
彼の魂に寄り添う者のこころが、穏やかであればいい。



主の幸福を希う黄龍が見上げる、遥かな天に揺蕩う絶望の蒼が、ゆらゆらと薄く滲んだ。









『PRAY』
今日も何処かで 誰かが 誰かのために















周囲から異端視されること。知己と同じ時間を過ごせないこと。愛する者に先立たれること。
ゼノの苦悩は原作で色々描かれていましたが、色々な辛い体験を忘れることが出来ないことが彼の一番の不幸なんじゃないかと。
二千年前の記憶を鮮明に回想出来るって哀し過ぎる。

当初は考察のつもりだったのですが、ゼノの希望が緋龍王のなかにあるといいなあと思ったのでこうなりました。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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