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女神→双子兄ss『夢のような日々』 サガと女神とアフロディーテ。


昼下がりの穏やかな風が仄かな薔薇の芳香を教皇宮へと運ぶ。



ふわりと揺れる薄手の紗に覆われた窓辺へと視線を遣れば、暖かな陽射しがやわらかな光の粒子となって宮殿内に降り注いでいる。
眩しさに双眸を細め、私は脳裏に匂い立つ薔薇の主の姿を思い描きながらゆっくりと背後を振り返った。

陽当たりの良い明るい室内の中央に敷かれた豪奢な絨毯の上に置かれた幾つものクッションに背を預ける形でゆるりと座するのは私の主である少女。
白磁のような肌と類稀な美貌を持つ少女ーー女神を見遣れば、彼女はあどけなさを残した微笑をふわりと此方へ向けてきた。その微かな身じろぎと共に絹糸の如き長く真っ直ぐな髪がさらりと揺れる。

「来客ですよ、アテナ」
「ええ」

嬉しそうに煌めく双眸を細め、少女の姿の私の主は身に纏った真白の衣装の、長く緩やかに波打つ裾を捌き音もなく立ち上がった。それからちらりと此方を窺い悪戯めいた表情を浮べる。

「折角なら貴方が居ない時に来てほしかったのに」
「……アテナ、一体何を企んでおられるのでしょうか?」
「うふふ、貴方に悪戯しようと思ったの」
「……」

見慣れていなければーー否、見慣れていても油断すれば見蕩れてしまうような笑顔でそんなことを告げる主に向けて大仰な溜息を洩らすものの、当然ながら全く動じず彼女はくるりと軽快な舞の如きステップで扉へと数歩進んでゆく。

彼女は人間の身には想像もつかぬほどの長き時を生きているというのに、人の器がそうさせるのか、そもそも神とはそういったものなのか、幼子のような言動や表情を私へと向けることが多い。
不思議なものだと思いながら軽やかに歩を進める後姿を視線で追うが、彼女はそれを気に留める様子もなく繊細な彫刻の施された重厚な扉の前で足を止めた。
すると彼女の動作に呼応するかの如くーー否、紛れもなく呼応したのだーー重苦しく軋む音を立て扉が開く。ゆっくりと教皇宮の回廊を流れるひやりとした空気の束が、暖かな陽射しの降り注ぐこの部屋へと忍び込むべく女神の装束の裾を緩やかに揺らした。

清雅な薔薇の芳香が、教皇宮の一室を密やかに満たしてゆく。

「御機嫌ようアフロディーテ……ありがとうーーまあ、とても綺麗な薔薇だわ」
「恐れ入ります。アテナ、失礼いたします」

荘厳な神の声というには些か語弊が生じる、鈴を転がしたような朗らかな高音と、その後には優美で艶のあるテノールが耳朶を打つ。
続いてその声音から抱く印象を裏切らぬ秀麗な青年の姿が視界に飛び込んでくる。美の女神の名を冠する彼は主である少女に軽く一礼すると地中海の水面を映し出したような淡く透明ないろを宿した双眸を此方へと向け、艶やかな笑みを浮かべた。

「サガ!」
「うん、どうしたアフロディーテ?」

腕に抱えた白薔薇のような、そんな華やかな笑顔だとぼんやりと思いながら問い掛ける。何か良いことでもあったのだろうか、部屋の中央へと歩を進める軽やかなステップも何処となく嬉しそうだ。
流れるような彼の動きに合わせ、そのすらりとした背を飾る豪奢なプラチナブロンドがふわりと揺れた。まるで青空にぽつりぽつりと浮かぶ白い雲のようだと、そんなことをまた思った。

「元気そうだね、良かった。サガはこのところずっと教皇宮に籠っているだろう?退屈だろうなって思ってさ」
「ちょっとアフロディーテ!退屈とは何ですか!失礼しちゃうわ、サガは私と一緒にいるのよ?退屈だなんて……」

聞き捨てならないとばかりに横槍を入れる少女に、私はそうですねと微笑み掛けた。

「他ならぬ貴女を独り占めさせていただき、このサガは幸せ者です」
「ほら聞いた?アフロディーテ、サガは幸せなのよ!」
「はは、それは何よりでございますな」

高らかに告げられた私の『幸福』の所在ーーそれは他でもない我等の女神が紡いだ言であるのだが、それを子供の戯言とでも思っているのだろうか、アフロディーテはさらりと言葉を返し軽く肩を竦め一呼吸置くと、この上なく丁寧な仕草で抱えた白薔薇の束を両手で持ち直し勝ち誇った表情の少女へと差し出した。

「アテナ、ご所望のお品です……棘の処理もしてありますのでそのままお持ちいただいて構いません」
「ええ、ありがとう」

それこそ蕾が綻んだような微笑みを浮かべ、彼女は大切そうに白薔薇を抱え込む。女神の御手に触れたからだろうか、僅かに灰色がかった花弁がほわりと輝きを放ったようなーー

「……アテナ、それは」

彼女が僅かながらに小宇宙を送り込んだのだと理解した私は声を落とし唯一無二の主の名を呼ぶ。
元来、生花をーー咲き誇るいのちを手折ることを余り好まない彼女が切花を所望することを私は些か珍しいと思っていたのだが……成程、小宇宙を送り込みその瑞々しさを永らえさせようというのかと得心し、それを彼女らしいと思いながらも私は敢えて彼女に言い諭すことを選んだ。

「例え花といえど、無闇にその理を捻じ曲げてはなりません……それはいのちを弄ぶことになりましょう」
「ーーだって」

途端、此方を見上げるアテナの煌めく双眸が哀し気に潤んだ。何故か、は分からない。何時も通りの、主を諭す他愛のない小言と受け取られるとばかり思っていた私は、今にも泣き出しそうな目の前の主の姿に息を呑む。

「だってーー嫌なの。寂しいの」
「アテナ?」
「サガ……私は」
「ーーアテナ、一体……」

何処か悲痛な光を宿した双眸を私へと向けてくる主に問いを重ねるべく言を紡ごうとした私を諌めるように、澄み渡ったテノールが割って入る。

「サガ、いいじゃないか。別に永遠に止め置こうという訳でもなし。私も丹精込めて育てた花が長く瑞々しさを保ってくれるのなら嬉しいしね」

軽く肩を竦め苦笑する優美な後輩の姿に、私もそうだな、と苦笑を返した。何となくーーだが、そうすべきなのだろうと思った。

「アテナ、失礼をーー出過ぎたことを申しました」
「ううん、ごめんなさい」

彼女はまるで人間の少女のように、少し浮かれたような嬉し気な笑顔で軽やかに踵を返す。それから、花瓶に活けてくるわねと振り返りざまに言い置いて。

「アテナ、そのようなことは私がーー」
「私が活けたいのです」

それこそ蕾の綻んだような笑顔で、彼女はぱたぱたと駆け出していく。それをはしたないなどとシオン様ならば仰られるだろうか、などとふと思い知らずまた苦笑が洩れた。

「ふぅん……こうして見ていると彼女も普通の女の子みたいだ」

可愛いねえ、との声の主を見遣ればそこには優し気に目を細め彼女が消えた方向を眺める秀麗な青年の姿があった。

「アフロディーテ、女神に向かってそのような……」
「別にいいだろう?悪口を言った訳でなし」

端正な弧を描く口の端を軽く上げ、美の女神の名を冠するに相応しく艶やかに笑う後輩の美貌をまじまじと眺め、それから私は小さく溜息をつく。

「……そうだな、お前に悪気がないのは先程の白薔薇を見れば分かる。正に戦女神に相応しい見事なーー」
「サガ、あれはアテナに頼まれただけだよ。彼女への献上品ではない」

アフロディーテの意外な切り返しに私は思わず目を瞠った。彼がアテナに贈った大輪の白薔薇は荘厳且つ豪奢で、だがそれでいて余計な華飾を削ぎ落としたようなーー些か男性的にも思えるが、それがまた戦績もさることながら豪快な闘い振りで名高い戦女神に相応しく感じられた。だからこそ、表面上は何だかんだと言いながらもこの後輩は女神を敬愛していると思えたのだが。

「私がアテナをイメージして薔薇を選ぶならもっとーーそうだな、色を含めもう少し可憐なものを選ぶかな」

意味有り気に微笑を浮べる後輩の意図がいまいち掴めず首を捻った私に対してなのか、彼もまた小首を傾げくすくすと、さも可笑しそうな声を立てている。

「貴方に謎掛けをしても仕方ないね。あの白薔薇は、アテナが貴方にと仰られたものだ」
「ーー私に?何故……」
「そうだな、慰めなんじゃないかな?日々の執務に追われ聖衣もなく教皇宮に閉じ込められた貴方への」

思ってもみなかった後輩の言葉に、馬鹿なことを、との呟きが口の端を突いて出た。

本当に、馬鹿なことだ。暫くご不在のシオン様の代理として聖域の執務を委託されたことはこの上ない光栄であるし、聖衣はカノンが双子座として遠方に赴いている為この場に存在しないだけのことだ。
弟と共に聖闘士として陽の下を歩むということーーそれが予てよりの私の一番の希みであったのだ。不満など有ろう筈がない。
それに何よりも、唯一無二のあの御方が……アテナが私のお傍に居てくださるというのに。

「アフロディーテも聞いただろう、私は幸せな筈だとのアテナのお言葉を」
「どうかな、私には貴方が幸せであってほしいという彼女の希望に聞こえたけれど。まあ、あとは貴方自身が確かめてみればいい」

やはり何処までも意味有り気な後輩の言葉に、不意に先程のアテナの声音が重なった。あの方は何と言った?

悪戯を仕掛けたとーーそれと、寂しいと。
彼女が投げて寄越したふたつのワードから導き出せるものは何もない。関連性も見付からず、ちぐはぐな単語だけが脳裏に響いた。

「ーー分からん」

思わず眉根を寄せそう呟いた私をちらりと見遣り、そのアクアマリンの如き輝きを宿す双眸を細めた彼はふわりと笑い。

「だからさ、アテナに訊いてみるといいよ」

やわらかな、心を蕩かすかのような優しい声音に私はそうだな、と頷いた。





✳︎





どれ程の時間眠っていたのだろうか、深い水底に沈んでいた意識が前触れもなく引き上げられた。

周囲に漂う清廉な芳香をあの白薔薇の香りだと理解したのは一瞬の後ーーそれから私は霞掛かった思考の中、ゆるりと重い瞼を上げた。

やわらかな寝具の感触。些かぼやけた視界に映し出されるのは見慣れた天井。豪奢な彫刻の施された石造りのーー長い間夜を過ごしてきた、教皇宮の寝室だと否応なく理解する。

(夢を、見ていたのか)

暖かな、優しい空間。現実と変わらず法衣を纏った己の隣には護るべき女神の御姿。双子座の聖衣姿の弟と、眩いばかりの笑顔を見せる親友、気心の知れた後輩たちーー魂の底から希み祈った幸福のかたち。

他ならぬ私自身が無残に壊した、私のただひとつの夢。

詮無いことと深く呼吸を洩らし、身を起こそうと力を込めるが何故だかそれが叶わない。
半ば途方に暮れながらも、自らが招いた冷徹な現実に身を置くべく意識を凝らすが、私を嘖むべく冷ややかに身を裂く空気が今は全く感じられない。

(何だ、これはーー)

有り得ないことだと理性が告げる。だがそれに相反するかの如く聖闘士としての本能もまた告げる。聖域を包むこの清廉で穏やかな、そして暖かな小宇宙……これは他ならぬアテナの小宇宙だ、と。

女神が帰還されたのか。私を討ちに馳せ参られたか。だが、それにしてはこの静謐さは何だ。
混乱する思考に追い討ちを掛けるように記憶が揺り戻される。そうだ、私は既にあの方と対峙し敗れた。氷の如き冥界の棺ーーそれから。

沙羅双樹の花の香り。仮初めの身体で腕に抱いたのは熱を喪った女神の器で。
消え逝く私の傍には天馬座のあの子が居た。私の為に泣いてくれた優しい少年ーーああ、彼は無事なのだろうか。

次の記憶は嘆きの壁……そうだ、聖戦はーー

記憶を辿る思考を遮るような、不意に鼻腔を擽る薔薇の芳香に意識が引き戻された。
同時に聴こえる、密やかで軽い足音。
重厚な扉が開く乾いた響きと、艶やかでやわらかな優しいアルト。

「サガ……!目が覚めたのですね?良かった……」

有り得る筈がないーーだが。

「ーーアテナ……?」

目の前に、私の枕元に駆け寄り今にも泣き出しそうな、それでいてとても嬉しそうな表情で此方を見詰める女性は紛れもなくアテナその方だった。
見る者すべてを魅了するだろう清廉な美貌は記憶の中の彼女よりも一層大人びていて、あれから幾許かの歳月が経ったのだろうと思わせるには充分だった。

「アテナ、私はーーいえ、それよりも聖戦は」
「聖戦は貴方たちのお陰で、もう随分前に終結しましたよ。それでやっと貴方を取り返すことが出来たというのに、貴方はなかなか起きてくれないからーー」

年齢差が縮まりましたね、と鈴を転がしたようにくすくす笑う女神に何と答えて良いか分からず曖昧に是と告げる。
不思議なことを仰る方だ。神である彼女にとっては人間である私など赤子同然であろうに。

「何故私は……生きているのですか」
「ーーサガ、貴方は私を……アテナを愛してくれていますか?」
「……は、それは勿論ーー」

それよりも、聖戦は終わったというにも拘らず何故自分は此処に居るのかとーー闘う為ではないのかという純粋な疑問、その問いを問いで、それも全く別の問いで返され一瞬戸惑いを覚えた。
だがそれもすぐに息苦しさに変わる。アテナが仰りたいことは恐らく私の自我が闇に堕ちたことに対する……今の私への懸念であろうか。

軋む心を抑えながら是と答える。声は震えていなかっただろうか。そう、私には心を痛め感情を揺らす資格などないのだ。

「そうよね、貴方は黄金聖闘士ですものね」
「ーーはい」
「じゃあ……『沙織』のことは?」

大輪の華の如き微笑を湛えて己を見詰める主のやわらかな、それでいて真っ直ぐな視線に得体の知れぬ戦慄を覚え、礼を欠くことのないよう僅かに双眸を伏せる。しかし彼女はそれを赦さぬとばかりに寝台へと身を乗り上げ、手を伸ばさぬまでも触れ合える距離から煌めく眼差しで再び私を捉えた。

予想外の彼女の行動に驚き身動ぎひとつ叶わず、ただただ彼女を見詰め返すしかない私の耳朶を、不意に心地好いーーだが聴き慣れぬ、遠い異国の旋律が飛び込んでくる。

「ーーッ」

その旋律が意味するものが何であるのか……その経緯が脳裏を過ぎり、私は文字通り言葉を失った。

ーー呼吸が、止まる。鼓動がひとつ、跳ね上がった気がした。

「ーー貴女様は、貴女様でございましょう……アテナ、私は未来永劫貴女に愛と忠誠を。それでは足りぬと、贖罪をと仰せであればこのサガ、如何様にもーー」

やっとの思いでーー努めて厳粛に、そして淡々とした口調で私は言葉を唇に乗せた。

アテナは私を測っておられる。そしてそれは当然のことなのだと、そう思っての返答であったのだが。
アテナにとっての私の回答は満足のいくものではないらしく、先程まで微笑を湛えていた美貌が翳る。
眉を顰め此方を見詰める瞳は何故だか傷付いた幼子のような光を宿しーーまるで、今にも泣き出しそうな。

「贖罪だなんてそんなものは要りません!私はっ……!」
「アテナ……?」
「私は!私はただ……、っ!」


(……大丈夫、だから)

泣かないで。


少年の頃の己の声がふと脳裏に響く。
それは誰に向けたものだったかーー弟だったか、後輩たちだったか。

酷く辛そうな、何かを堪えるような彼女の表情を目の当たりにした私は躊躇うことなくーー否、そういった意識すらなく己の片腕をそっと伸ばし、流れ落ちる絹糸のような髪を指先でさらりと梳いていく。
主への、それも紛れもない女神に対しての振る舞いとしては不遜に過ぎるやも知れぬが、私にはそれを為すことが至極当然のように思えた。何かを言い募ろうと此方を見据える彼女の眼差しが、人間の少女のような表情が何故だかとても懐かしい。

ーーああ、そうだ。昔、弟や幼い後輩たちを宥める時、労う時にはこのように彼らの頭を撫でてやったものだ。

指先で触れた女神の髪の滑らかな感触に懐かしい光景を思う。全てを壊した私にそれでも残された暖かな記憶は、今も尚暗闇を照らす灯火のように。

「ーーっ、あの、 サガ……」
「落ち着かれましたか、アテナ?」

後輩たちの幼い姿を目の前の少女に重ねながら、さすがに幼子のそれとは異なる煌めきを宿す彼女の双眸を眺めていると不意に上擦った、些か慌てたような声音で名を呼ばれた。そこに先程までの焦燥に満ちた響きはなく、私は安堵の溜息を洩らしながら笑顔を浮かべ言葉を返す。

「ええ……その、ごめんなさい」

少し照れながら、おどけて笑う彼女はまるで人間のーー年相応の少女のような。

(これは夢の、続きなのかーー?)

紡ぐべき言葉が見付からず、ただ主の姿を見詰める私の耳朶を先程と同じ異国の不思議な旋律が通り過ぎていく。
それは今生での女神の名であり、そしてこの私の罪状そのものだ。

微かな軋みを胸中に覚えながらも、心地好いやわらかな旋律だと感じられる。それは女神御自身が音階を奏でているから、なのであろうか。

「……何時か気が向いた時で構いませんから、私を沙織と呼んでくださいね」
「それはーー御命令とあらば」
「まあ、命令なんてしないわよ」

命令と思うだなんて、酷い人ね。などとーー心外だと言わんばかりに私を軽く睨み付ける彼女の、勇猛果敢な戦女神には似つかわしくない姿を見ることが出来たのは紛れもない僥倖なのだと、そう思うべきなのだろうか。

ふと、夢の中で同じことを思ったようなーー脳裏を朧気な、けれど暖かな光景が蘇り、知らず笑みが零れた。

「では……努力しましょう」
「ええ、早く『沙織』のことも好きになってくださいね?」
「ーーですから、貴女様は貴女様でございましょう」
「そうだけど、そうじゃないわ」

言葉遊びとしか思えぬ彼女との問答は、見る者すべてを魅了するような極上の、それでいて悪戯めいた微笑で強引に打ち切られた。





艶やかな残像を残し扉の向こうに消えた主の、謎に満ちた言葉の意味を考えるべく取り留めもない思考の中に己を置いていた私の意識は、漂う薔薇の芳香にふと引き戻された。
寝台から半身を起こした姿勢のままゆっくりと周囲を見渡せば、見覚えのある白薔薇が窓辺にひっそりと活けられている。

(ーーああ、アフロディーテの)

先程まで揺蕩っていた暖かな夢に見た、洗練された印象の大輪の花を眺めていると嘗て美神の名をほしいままにした、秀麗な後輩の立ち姿が脳裏に浮かぶ。

やはり私は夢の中に在るのか。生じる疑念に視線を落とし、己の右の掌をじっと見詰めた。
さらさらとした絹糸のように滑らかな、女神の髪の感触が残るーーそれは確かに現実のものであろうに。

やがて逡巡する思考を放棄し、私は再び窓辺でひっそりと物言わぬ、だが一際存在感を放つ白薔薇へと視線を向けた。咲き誇る大輪のその先には、彼方まで拡がる澄み渡った蒼。


それは遠い昔、親友と共に笑い転げながら見上げたそらのいろ。
そして何よりも誰よりも、弟と共に見上げることを強く希ったーー


(……取り戻すことが、出来るのだろうか)


ぼんやりと、そんなことを思う。





白薔薇の芳香が、一段と強く感じられた。










『夢のような日々』
きっと、素晴らしい















楽しかったです、とても。
誰にも求められなくても書いちゃうんだぜ妄想ってスバラシイ٩('ω')ﻭ

聖戦後黄金甦り設定とかもうデフォですよ☆二次創作あるあるですよ!
深く考えてないけど何となく、サガと女神は干支が同じくらいがいいなって……



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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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