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サガ沙ss『piece of mind.6』 サガとさおりん。サガアテナなのかアテサガなのかってやつ。


「昨日ね、アフロディーテが神殿の庭園に薔薇を植えてくれたのです。とても綺麗なの……サガ、よかったら見に来てくださいな」

朝食後のコーヒーの味を満喫しながら、沙織は目の前に座る双子座へと華やかな笑顔を向けた。

「それはようございました……では、後ほど伺わせていただきます」
「ええ。それと折角ですからお昼をご一緒しませんか?神殿のテラスで」

一週間振りの沙織の誘いにサガは一瞬驚いた様子を見せたが、直ぐに穏やかな笑顔を浮かべ小さく頷く。

「ありがとうございます。午前の執務が済み次第参ります故」

ふわりと笑いそう返答する青年に、沙織もまた瞳を細め嬉しそうな笑顔を返す。
それから、他愛もない幾つかの会話を交わした後、席を立ち軽く一礼する彼を見送った沙織は手にしたコーヒーカップをテーブルへと置き小さく息を洩らした。

深く考えるまでもなく拒絶されはしないだろうことに対し柄にもなく緊張を感じた自分自身に苦笑しつつ、彼女は昨日のアフロディーテの言葉を思い出していた。

(迷ってはいけない)

胸の内でその言葉を反芻し、そっと瞳を閉じる。我侭を貫くことを躊躇ってはならない。

だって私は踏み出してしまったーー思えばもう一年以上前に。
神の力を使い人の理を捻じ曲げて、皆を呼び戻して。
……無理矢理、彼を目覚めさせて。

「思えば私、昔から我侭なのでしたね」

サガが目覚めて暫くの後、彼に会うため聖域を訪れた星矢に揶揄されたその遣り取りをふと思い出し、沙織は軽く肩を竦めると苦笑を浮かべた。
城戸財閥総帥の孫娘として何不自由なく育てられたことの所以だろうと、幼い頃の彼女の気質を幼馴染の聖闘士たちは評価する。けれどもきっとそれは自分の本質なのだろうと、朧気に記憶に残る遥か昔の天界での己の振る舞いとも照らし合わせ、彼女は思った。
勝利の女神を常に傍らに従えた戦神アテナ。その在り方は何処までも自分本意だ。

けれどもそれでいいのだ、と沙織は思う。そうでなければ、自分が立たねば、神々の侵略からこの地上は護れない。

「……サガ」

それから、執務室へと向かった男の名をぽつりと紡ぎ、薄く開いた己の唇にそっと指先で触れた。今も胸に残るあのひとの熱と感触。あの日、触れたら応えてくれたのは彼が私の聖闘士だからーーそれはその通り、なのだろうけど。

ーーどのような貴女も、貴女でありましょう?

穏やかで艶やかに空気を震わす、低く耳障りのよい声音が不意に沙織の脳裏を過ぎる。そうだ、アフロディーテも昨日同じことを言っていた。あのふたりは何処か考え方が似ているのかも知れないと知らず目を細め、彼女は窓の外の他愛ない朝の光景に視線を移した。

(ならば……赦してもらえるのだろうかーー私は)

天に向かい歪な波紋を描く亜麻と緑の万華鏡にも似た枝葉の隙間から零れ落ちた、やわらかな光が積み重なる新緑の絨毯が風に吹かれそよぐ姿をぼんやりと眺めながら、沙織は声には出さずに独り言ちた。
それから、自らが胸の内で紡いだ問いが紛れもない希望ーー願いであることに気付き息を呑む。

(赦されたいーー?)
(私が……あのひと、に?)

こんな願いは有り得ない……あってはならないはずだ。
主だの臣下だのの前に、私は人ではないのだ。神と呼ばれる、人間に対して絶対的な優位者のはずなのだ。
神が人に赦しを乞うなど、そんな立場の逆転はーー私の感情どうこう以前に、あのひとの価値観を壊してしまいはしないか。

ーー貴女の思いが、神から人へ向けるものであれ、女が男へと向けるものであれーー

自らの思いに戸惑う沙織の脳裏に、昨日神殿の庭園で魚座の青年が紡いだ言葉が鮮明に響き渡る。謳うように流れる心地よいテノールは、やがて魅惑的な女の声に変わり。

「アフロディーテ……勝利が約束されたゲームなんて、そんなものはきっとーー」

苦い思いをその美貌に浮かべ、沙織は魚座の青年と、それから彼女とは対極に位置する女神へとぽつりと告げた。









女神神殿の庭園へとサガが足を踏み入れたのは正午を少し過ぎた頃だった。

真昼の眩しい陽射しを浴びて淡く煌めくシャンパンゴールドの、綻びかけた幾つもの大輪の薔薇の蕾を双眸に映し出し、その見事なまでの美しさに彼は思わず息を呑んだ。

「……金華山……」

アフロディーテが植えたという薔薇の品種がまさかこのオールドローズであるとは思いもしなかったサガは、半ば呆然とした呟きを洩らす。

「まあ……!サガはこの花の和名をご存知なのですね」

目の前の青年がこの薔薇を、日本と自分との縁としてくれたことーー好きだと言ってくれていたこと。そしてきっと、敢えてアフロディーテがこの薔薇を選んで植えてくれたこと。
それを秘密だと言われた通り、沙織は何も知らない素振りで驚いてみせる。

「……はい。嘗て日本に渡り、広く人々から愛された品種なのだと聞き及んでおります」
「金華山……とても風情のある、美しい名ですよね」

そのように言われても、漢字や日本語に馴染みの薄いサガには共感が難しく、少し困ったように曖昧な表情を浮かべた。けれども沙織はそれを気にするでもなく件の薔薇の苗へと視線を移し、やわらかでいながら何処か切なげに、微笑う。

「きれいな、黄金色ーーまるで貴方のようです」
「……は?」

まさか自分が薔薇の、それもアテナの半生の如き歴史を持つ金華山の色彩に喩えられるなどと予想するはずもなく、己の立場も忘れ思わず口を滑らせたその問い掛け……とすら呼べないサガの声に、沙織はくるりと振り返るとふわりと蕩けるような、酷く幸福めいた表情で。

「貴方の、小宇宙のいろです」
「……小宇宙?」
「はい。とてもきれいな、優しい黄金色……私には、そう見えるのです」

まるで夢見るような女神の眼差し。本来、力の具現であるはずの小宇宙が彼女にはそのように映るのかーーこの方の瞳には、この世界はどのように映し出されているのだろうか。

サガのこころに去来するのは純粋な驚きと疑問。だが、それはやがて別の形となって彼の身の内に、落とされた水滴の如く波紋を描いていく。


貴女を取り巻く景色を、世界のいろをーー


「……サガ?」

眼前に佇む青年の表情が何時の間にか消え去っていることに気付き、沙織は怪訝な顔で彼の名を呼ぶ。
自分は何か不用意なことを言っただろうか?黄金聖闘士たる彼の小宇宙を、花に喩えたことが彼の矜持を傷付けてしまったのだろうか?
違う。きっとそんなことで彼が誇りを傷付けられるなど有りはしない。それを分かっていながら……否、分かっていればこそ焦燥にも似た思いが己のこころをざらりと撫でるのを沙織には止められなかった。

「あの、サガ……ごめんなさい私」
「ーーいえ。失礼を……人の身には小宇宙の可視化という概念がなくーー少し驚いてしまい」

咄嗟に常の表情を浮かべそう告げるも、サガは己の中に密やかに頭を擡げる、だが幸いにして明確な欲とは言えぬ思いを自覚していた。そして同時に主たる女神へと向けるこころにまたひとつ、ノイズが混じったことにも。

人は、神にはなれない。
そして己がそれを望むことも決してない。

それだけは純然たる事実であるのに、たった今、それにも拘らず望んだことがある。


この方と同じ光景を、見ることができたならーーと。


「アテナ……貴女のお気を煩わせるようなことはーー何も」

普段通りの穏やかな表情で彼は主へと告げる。その言葉通りでなければならないと己に言い聞かせるように。
決して彼女にそれを見せてはならない。それどころか打ち捨てるべき願いであるとサガは自身の中に生まれた思いの質を評した。

それは、どうしようもないものだ。
人が神になれないのと同様に、神の魂は存在する限り神であるのだ。

「……ですが、サガ」

何でもないはずはないだろうと、沙織は己の双子座へと問を重ねる。自分の不用意な発言に思うところがあったとしても、それがサガの個人的感情に由来するものである限り彼はそれをどうこうは言わないだろう。それは自分がサガの主であり女神である以上、彼にとっては当たり前のことなのだ。

それを分かっていながらも、沙織は嫌だ、と思った。自分は彼にこんな風に接してほしいのではない。我侭なのは分かっている。けれどもそんな線引きなどーー私は、要らない。

「アテナ?」
「お願い、ですから……サガ」

俯いてしまった沙織の様子に今度はサガが怪訝な表情を浮かべた。哀しげな、まるでこの庭園の新緑の中に消え去ってしまいそうな心細い姿。彼女にこのような顔をさせてしまっているのは恐らく自分なのだろう。
神である沙織には己が先ほど抱え込んだ、捨て去るべき願いも見通されているのかも知れないと思い至り、彼は眉を寄せ秀麗な美貌を曇らせ主を見詰めた。

何かを言わなければならないーーだが、咄嗟に紡ぐべき言葉が見付からず唇を咬む。相手の意を酌むこと、他者の感情や立場に寄り添うこと。決して不得手ではなかったそれらのことが全く以てできずにいる自分自身に苛立ちを覚えながら胸の内で自問する。
自分は何をしているのだ。この方の望む言葉は何だ。どうすれば彼女は先ほどまでの眩しいまでの笑顔と凛とした佇まいを取り戻してくれるのかーー

幾ら逡巡を重ねても回答は得られない。大いなる小宇宙を宿した戦女神であるはずの目の前の少女は消え入りそうな風情のままで。

ざわり、と庭園の枝葉が揺れる音が聴こえる。

一陣の風が、儚く散った名も知らぬ小さな花弁を幾つも巻き込み立ち尽くすふたりの髪と身に纏う衣装を揺らし吹き抜けていく。

「ーー!」

風がーー突風、などとは到底呼ぶことのできないほどの単なる涼風が、巻き込んだ白い花弁と共に彼女を……眼前に佇む華奢な少女を連れ去ってしまうような錯覚を覚え、サガは咄嗟に腕を伸ばし自らの主であるはずの少女を引き寄せる。
彼の腕に抱え込まれた沙織は驚きに瞳を見開き、己の双子座を伺い見た。何処か焦燥に駆られたような、切羽詰ったような様子の青年にどうしたのかと小さく問えば、彼は目に見えて安堵の表情を浮かべ。

「……いえ、風に煽られた草の葉がーー御身を傷付けやしまいかと……失礼致しました」
「まあ……!ありがとう。でも私そこまで弱くはないですよ?一応戦女神なのですから」

身を離すでもなく、沙織は鈴を転がすように笑う。笑いながら、思い掛けず触れることのできた青年の体温に泣きたくなるような、こころが蕩けていくような心地を覚えそっと双眸を伏せた。
何となく、告げられたサガの言葉は真実とは少し異なるような気がする。自分が女神であるとか彼の主であること以前に、吹き抜ける風が運ぶ欠片など光速を手にした黄金聖闘士が身を呈するに値する障害物ではないだろう。

欲しいものを、このひとはまた与えてくれたのだろうか。
私はーー昨日アフロディーテに言われたように、こんな風に彼に接してほしいのだろうか。

線引きもなく、垣根もなく、世界中の何処にでもいる恋人同士のように。

「ーーねえ、サガ……貴方は」

沙織の唇から、謳うように紡がれる旋律。
告げるべきではないだろうと、分かってはいた。
分かっていたけれども自然と口を突いて出た、赦してくれますか?との沙織の問い掛けがサガの耳朶を打ったーーその時だった。

一瞬、間近で力強い小宇宙が立ち上がり直ぐに収束する。例え聖闘士であろうとも本来許可なく立ち入ることなどないはずのアテナ神殿の庭園への闖入者の気配に、咄嗟にふたりの視線が一点へと注がれた。
緑の波紋を天へと掲げる大樹の、物言わぬ白亜の幹の向こうに、何者かが確かに存在する。
但し何処かで触れたことのあるような小宇宙……現在の聖域の守備体制を鑑みても恐らく相手は敵ではない。そうは理解しつつも不遜に過ぎる闖入者を捨て置くことはできまいと厳しい表情で前を見据えるサガの腕の中から、沙織が待って、と小さな声を上げた。

「アテナ?」
「大丈夫ですよ、サガーーお久し振りですね」

ふわりとサガに笑い掛け、沙織はするりとその腕の中から抜け出すと、姿の見えない闖入者へとそう告げた。















小宇宙は感じるもの、だと思うのですが可視化はしてないような。
だけど神様には『視る』こともできるかなって……何となく。
細かいことは気にしない!



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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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