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ハクヨナ前提未来話 『路傍の花』.3 ユン、ヨナ、ハク+α。女王陛下のサロン再び。オリキャラ登場しますのでご注意ください!


生成に萌葱を重ねた長衣の裾を捌きながら外回廊を抜け奥宮殿に入ると、その先に拡がる空間は穏やかな静寂に覆われていた。

表宮殿の喧騒とは打って変わった落ち着いた雰囲気に俺はふう、と安堵の溜息を洩らし一旦止めた歩を再び進める。
視界の片隅に映った、奥宮殿に控える女官が俺の姿を認めて軽く会釈する。淡々とした表情ひとつ変えず、一言も発することなくーー取り立てて存在を主張することのない女官の姿勢は非常に清々しく、些かうんざりしていた気分が持ち直すのを感じた。

此処は本当に居心地が良い。

表宮殿のざわついた空気と、そこに控えるあからさまに媚を売った所作の若い女官たちの、欲に塗れた厚化粧の顔をふと思い出した俺は思わずめんどくさ、とぼそりと呟きもう一度嘆息する。
そりゃ今現在この国を運営する中核にあたる、誰もが羨む地位も名声も手に入れた自他共に認める天才美青年の俺に擦り寄りたい気持ちは分かるけどさ。
めんどくさいんだよ、そういうの。
野心家は嫌いじゃないけど、他人の野心に便乗するみたいなのは不愉快だ。

だけど、俺の王は言う。
彼女たちは皆貴族や良家の子女なのよ?家や一族の繁栄のためにそういう生き方をしているの。勿論それが必ずしも彼女たちの幸せな選択だって言うつもりはないわ。でも、国力の維持には必要なことだからーー

苦笑しながら、ほんの少し寂しそうに。
ごめんね、我慢してね、なんて言う彼女にそれ以上の文句なんて言えるはずがない。

だけど、俺の王は宮殿に上がる所謂『良家の子女』の生き方の選択肢の限定を良しとしてはいなかった。
彼女たちの存在意義が国家の繁栄、国家に属する一族の繁栄のためというなら、いっそ媚を売られる立場になったらいいんじゃないかしら?
そんなことを、彼女は中庭の東屋でお茶を飲みながら俺に向かって笑いながら言った。
大きな紫紺の瞳をキラキラ輝かせて。

「ねえ、陛下は?」
「はい。中庭においででございます」
「そう、ありがと」

佇む女官とすれ違いざま徐に問い掛けると、彼女は相変わらず淡々とした表情と口調で端的に答え、再び俺に一礼した。

彼女はーー彼女だけじゃない、奥宮殿に仕える女官は、女官でありながら学生……所謂士官候補生だ。
女官として上がった娘たちの中で才能と気概を持ち、そして女王自らが提示した生き方の可能性を掴みたいと願った者は皆奥宮殿に集められた。奥宮殿で、一日の大半を国政に携わるための勉学に励みながら交代で女官としての最低限の業務を行う。
さすがに国王の居城でそれはまずいんじゃないかと訴えたら、どうせ奥宮殿の女官なんて暇なんだし、私は大概のことは自分でできるからいいのよと長く市井で暮らした女王はからりと笑った。
難色を示す重臣には「貴方たちの娘さんが出世したら王族のお婿さんだって取れるわよ?」で、まあ些か乱暴に押し切っちゃって。

お陰様で、俺はめちゃくちゃ忙しい。
宰相として国政を執り行う傍ら、彼女たちの教育の一端を担ってる。
まあ出来るけどね、俺は天才美青年だから。

「もう少しだ、イクス」

かつて放逐された神官の生き残りを捜し出し手篤く保護した女王の取計らいで、今は王都の俺の屋敷で暮らす恩師の姿を脳裏に描きながら独り言ちる。

お願いがあるんだ、と講師の任を受ける交換条件を俺は女王に提示した。
全国に学校と診療所を開設したい。金持ちのためのやつじゃなくて、誰もが通える施設として。
皆が笑って暮らせるように。豊かになれるように。病や飢えで苦しむ人が減るように、と。

そしたら、彼女は悪戯めいた笑顔で。

「じゃあユン、貴方が先生を育ててね?まずは彼女たちの何人かを先生の先生にすればいいわ。開設資金は私が何とかする……それでいい?」

高華の緋い龍は、朗らかに高らかに、俺にそう告げたんだ。










奥宮殿の内回廊を、女王を訪ね中庭に向かうべく歩いていると、ぱたぱたと軽快な靴音が進行方向から響いてくる。ごく短い間隔で石畳を踏み締めるそれは子供の足音だとすぐに知れた。
程なくして視界に映る、癖のない黒髪を短く切り揃えた幼い少年に向かい注意がてら呼び掛ける。

「殿下!」
「……ユン先生!」

屈託のない子供特有の笑顔で俺の名を呼び、転がるように駆け寄ってくる少年の双眸は、女王のそれと同じいろを宿している。
殿下はホント可愛いなぁ誰かさんとは大違いだ、なんて笑う切れ長の瞳をした人懐っこい風の部族長の姿をふと思い出した俺もまた小さく笑った。

「廊下は走るなっていつも言ってんだろー?もし転んで怪我でもしたら……」
「そっか、めんどくさいことになるんだよね?ごめんなさい先生」
「……。それもあるけど、母上が心配するだろ」

物事の判断基準がいつの間にか「めんどくさい」か否かになってしまったこの小さな教え子をまじまじと眺め遣った俺は内心で苦笑いする。全く、口癖ってやつは恐ろしい。

「うん……ごめんなさい先生」

そんな俺を、目の前の小さな教え子は母親譲りの紫紺の瞳で真っ直ぐに見上げながら神妙な面持ちで謝罪の言葉を口にした。うん、ホント誰かさんとは違って素直だよね。
分かればいいよ、なんて優しく言ってやれば少年はぱっと表情を輝かせて小さな手で俺の腕を掴む。

「ユン先生!中庭で母上が待ってるよ?」
「母上はひとり?」
「ううん、将軍と一緒!」
「……そっか」

屈託のない眩しい笑顔で告げられた幼い少年の言葉が俺の胸にちくりと突き刺さる。ちらと彼の双眸を覗き込むようにして窺い見たけど、黎明の空のいろみたいなこの子の瞳に悲しみの光なんてものは少しだって浮かんでやしない。

(勝手な押し付けなのかなーーヨナ)

大人の都合で振り回されるこの子の言葉にいちいち傷付いて、同情めいた思いを向けるのは……俺の、身勝手な押し付けなんだろうか。

「先生、早く!」

逡巡する思考に囚われ掛けた俺のことなんて知ったことかと言わんばかりに、子供特有の甲高い声が耳に響く。
天真爛漫を絵に描いたような少年の姿に、知らず俺は口元を綻ばせていた。

「分かったから、走るなっての!」

ぐいと手を引く子供の背丈に合わせて屈みつつ、俺は口を突いて出た嗜めの言葉とは裏腹に小さな教え子に合わせて駆け出した。










奥宮殿の中庭へと続く扉を開けると、若草の香りが俺の鼻腔に飛び込んでくる。
何時のことだったか、俺の王とーー仲間と共に初夏の森を歩いた記憶が脳裏を過ぎり、その言い知れぬ懐かしさに自然と瞼が閉ざされる。一瞬にして俺を包み込む、涙を誘う郷愁の念。しかしそれは俺の手を引く少年の一声で薄い被膜が弾けるように霧散した。

「母上ー!ユン先生を呼んできたよー!」

俺の小さな教え子は、そう叫びざま先ほどの遣り取りなどまるでなかったことみたいに東屋に繋がる石畳の小路を駆け出していく。
転ぶなよ、と翡翠に金銀の刺繍が施された上布を纏った小さな背中に呼び掛けた俺はゆっくりと周囲を見回しながら彼の後に続き細い小路を歩き出した。

一面の緑青に彩りを添える、咲き乱れた月白の小花。その奥には、目が覚めるような紅紫がその鮮烈な存在を主張している。

ああーー今年も芍薬が見事に咲いた。

数年前、この庭園に野生の植物であるはずの芍薬の種を植えたのは俺の王と、王の片腕であるところの男だった。
野生の花なんて高華王に似つかわしくないんじゃないか、なんてちょっと思いはしたけど。でも、考えれば考えるほど芍薬ほど彼女に似合う植物はないと思えてしまって。

(ホント、よく分かってるよね)

女王の庭園に芍薬を植えることを提案した黒髪の男に向けて、俺は胸の内でそう呟きながらゆっくりと歩を進めていく。あと何年かしたらあの芍薬の根っこは薬になる。ああ、その頃には全国に診療所が出来てるはずだ。
本当に楽しみだ、と俺は単純に来たるべき未来を思う。きっとまたひとつこの国は豊かになる。皆が笑って暮らせる国になる。女王の権威は益々増して俺の名声も高まるだろう。こんなに楽しみなことはないじゃないか。

軽い足取りで小路を進むと、やがて前方に豪華な装飾が施された石造りの東屋が姿を現した。扉のない入り口にちょこんと佇むのは俺を置いて駆け出していった小さな教え子。

「殿下」
「あ、ユン先生!母上、ユン先生が来たよ!」

俺の呼び掛けに振り返り、小さな少年がそれは嬉しそうに声を上げた。その満面の笑顔は眩いばかりでーーホント可愛い。誰かさんとは大違いだ。
先ほどと同じ感想をしつこいくらいに繰り返しながら東屋の門を潜ると、その中央に設置された机を挟んだ正面に奥宮殿のーーいや、この国の主がゆったりと腰掛けていた。
金と紅を重ねた豪奢な装束に身を包み穏やかに微笑む美貌の若き女王の姿はきっと見る者を釘付けにしてしまうだろう輝きと、神々しいまでの威厳に満ち溢れている。だけど『彼女』をよく知る俺は別段何も感じることなく、ただ「きれいだね」と正直な感想を述べた。
気安い俺の言葉に、女王は苦笑いで小首を傾げる。そんなところ、彼女はやっぱり変わらない。

「窮屈で仕方ないわ」
「しょうがないでしょ、今夜は他国の使者と晩餐なんだから。今日の相手は使者ったってれっきとした王族なんだからね!」
「分かってるわよ。だから打ち合わせに来てくれたんでしょ?」
「まあね。遅れてごめんヨナ、ちょっとバタバタしててーーところでさ」

長いこと変わらない、気安い遣り取りを遮った俺は中途半端に結い上げられたヨナの緋い髪をちらと見て、それから彼女の隣で波打つその髪を幾房か掬い上げている黒髪の美丈夫を一瞥した。

「何やってんのさ、あんた」
「何ってーー見て分かんねえの?髪結いだよ」
「じゃなくて!何でそれを雷獣がやってんのさ?」

この!天才美青年であるこの俺に向かって「頭おかしいんじゃねえの?」とでも言わんばかりのその口調!正直胸倉掴んでやりたい気分だけど、俺はそれをぐっと堪えて冷静に、そして思いっきり白けた眼差しをくれてやる。

「それこそ女官の仕事でしょ……いくらあんたが器用ったってさ」

すると、今度はヨナがころころと笑いながら口を挟んだ。

「皆勉強が忙しいのよ。こんなことで彼女達の手を煩わせるわけにはいかないわ」
「こんなことって……」

だから重要な晩餐会だって言ってるじゃないか。そりゃあヨナの『使えるものは何でも使え』って姿勢には賛同するけどさ。
思わず肩を落とした俺は大仰な溜息を洩らすと改めて女王とその寵臣の姿を眺め遣る。金糸の刺繍を地模様に重ねた、艶を放つ絹で誂えた黒装束はその傍らに座る紅と見事なまでの対比となって一枚の絵画のようだ。だけど何というか、非常に目の毒だ。
子供の教育に悪いとまでは言わないけど。

そんなことを思いながら俺の隣に立ったままの教え子をちらと見れば無邪気な笑顔を女王と、その隣に佇む男へと向けていた。
子供だから、というよりもこの子にとっては他愛ない日常の姿なんだろうなと思い直し肩を竦める。

「殿下、今夜は外国からお客様が来るからね」
「うん。大丈夫、ご挨拶とか作法とか僕いっぱい練習したから!」
「そうだね。立派な殿下の姿を先生楽しみにしてるから。ちゃんと母上の隣にいるんだぞ」
「はい!」

教え子と今夜の最終打ち合わせをしつつ頷き合っていると、ヨナの『髪結い』が終わったらしい雷獣が俺達の前に大股で近付いてきた。それから「ユン、借りるぞ」と主語のない一言の後俺に向けていた視線を移動させる。

「殿下、母上の花を」
「うん!」

その短い遣り取りを置き去りにして、さっさと雷獣は東屋から庭へと出ていく。そして彼の広い背中を追い、俺の教え子がぱたぱたと小さな足を動かして後に続いた。
雷獣はそのまま庭の奥の方へと真っ直ぐに進んでいく。後ろを振り返ることはなかった。だけど少年の歩調に合わせているのが分かる。
風牙の都でもきっとああだったんだろうなーかつての部族長としての手腕や武力以外の部分でも風の部族内でやたらと評判の良い青年の後姿を眺め、俺はひとり小さく笑うと緋い髪を綺麗に結い上げた女王に向き直った。

彼女は穏やかな表情で、紫紺の瞳を庭園の片隅を眺めている。雷獣と殿下を見ているんだって、ひと目でわかる。
ゆったりと腰掛ける女王の艶やかな姿を見遣りながら、俺はここ数年胸につかえているーー日を追うごとに強くなる疑問を口にした。尤も、この質問も何度目になるか分かんないけど。

「ねえ、ヨナ」
「なあに?」
「ヨナは……このままでいいの?」

彼女の正面に腰を下ろした俺は、彼女を真っ直ぐに見据えーーほんの少しの上目遣いを忘れずにーーそう切り出した。
ヨナは一瞬キョトンとして、キラキラ輝く紫紺の瞳を見開いた後小さく首を傾げる。

「このままって?」
「だから……前も言ったけど、雷獣のこと」
「ハク?」
「うん。ヨナはこのまま雷獣と結婚しないでいるの?」

高華国は本来女性に王位継承されない。その慣例を破ってヨナは王位に就いた。それだけの価値が彼女にはあったから。だけど、彼女が結婚すれば王位は彼女の夫に移るーー少なくとも、そう主張する古臭い輩は確実に存在する。それをねじ伏せることは容易だけど、国内で余計な敵は作りたくない。各部族との間に妙な波風が立つことも避けたい。そう判断して、ヨナが独身を貫いていることは知っている。だけど。

「うん。しないわ」

いつも通りの笑顔でさらりと返ってくるヨナの返事を、俺はもう何度聞いただろう。分かってるよ、それがいちばんめんどくさくない選択だって。

だけど。

「王婿とか大公とか、新たな地位を作ることだってできるんだよ?」
「……新しい派閥争いが生まれるわ」
「雷獣はそんなの寄せ付けないでしょ」
「ハクは良くても、ムンドクやテウが大変よ。それにーー」

今は良くても、いつかまたこの国に女王が立ったときに波風が立つわーーそう、彼女は少し寂しそうな笑顔で。
そのときの女王の夫が、どんな人物か分からないでしょ?他国の人も知れないし、なんて。

そんなの、そのときの権力者がどうにかすることだ。
遠い未来の不確定な不安の種を摘み取るためにヨナが、それからあの子が我慢することなんてないじゃないか。

「……殿下は、いつまで経っても雷獣のこと、父と呼べない」

ぽつりと洩らした俺の言葉にヨナは一瞬驚いたようにに双眸を見開き、それからふふ、と小さく笑った。

「ねぇユン、それってそんなに大切?」
「そりゃあ……!」

当たり前だろ、と思わず上げた俺の声を制したヨナは小首を傾げて可笑しそうに問いを重ねてくる。

「私はユンをユンと呼ぶけれど、じゃあユンは宰相ではないの?」
「それは役職名でしよ……」
「ハクは、私のこと相変わらず姫さんって呼ぶわ」
「……」

その切り返しに応酬の言葉が見付からず黙った俺に、ありがとうと笑ったヨナは軽く肩を竦めると鮮やかな紅を引いた唇を綻ばせて。

「見て、ユン」

彼女の視線が指し示す方向を請われるまま追えば、視界の先には陽射しを浴びて一層鮮やかに映る翡翠の衣を纏った幼い少年と、黒装束の男の姿。
小さな手に大輪の紅い花を一輪、大事そうに抱え小路を歩く殿下を背後から守護するように、ゆったりとした歩調でその後に続く雷獣は、力強くありながらもその表情は酷く優しげで。



ーー父親の貌をしている。そう、思った。



「私達は、このままでしあわせなのよ」

ユン流に言えば『めんどくさ』くないしね、と戯けたように付け加えたヨナがもういちど、朗らかに笑う。
その双眸の光の中に悲しみや諦観なんて、ひとかけらだって見い出せない。

「母上!母上のお花だよ!」
「ありがとう、あなたが摘んでくれたの?」
「うん!いちばんきれいに咲いてたやつだよ」

それからぱたぱたと、最後は駆け足で飛び込んできた俺の教え子に、ヨナは心底嬉しそうな笑顔を向けた。まるで彼が手にしている大輪の牡丹のように華やかな笑顔だった。

大輪の、紅い牡丹。花王と呼ばれる、国王のーーヨナのための花だ。

「殿下」
「うん、将軍」

殿下に続いて東屋の門をくぐった雷獣は、小さな手から紅い牡丹を受け取るとそのままヨナの隣に立ち、自ら結い上げた彼女の髪に器用な手付きで牡丹の茎を挿し入れた。
その様子を、黒髪の少年が満面の笑顔を浮かべ嬉しそうに見詰めている。

ああ、なんて眩しい。

「さてと……少ししたら行きますか、姫さん」
「そうね、今すぐ行って皆のお手伝いしてもいいけれど」
「余計なことしてその花散らさんでくださいよ」
「うるさいわね」

分かってるわよ、と頬を膨らませたヨナはずっと前から見てきた、昔と何ら変わることないヨナだ。
普段通りの雷獣との遣り取りも、やっぱり変わらない。

「ユン、どうしてあなたは宰相として此処にいるの?」

不意に、ヨナの問い掛けがぼんやりと眼前の光景を眺めていた俺の耳に響く。
思わず声の主をまじまじと凝視した俺に、彼女はもういちど問いを繰り返した。

「ねえ、どうして?」
「ーー俺の、望みを叶えるためだ」
「うん。私も私の望みを叶えるために此処にいるわ」

今が幸福でないのなら、私はとっくに動いているわ。そう、言外に告げられたのだと思った。
そうだ。ヨナにはそれだけの権力がある。

「うん、そうだねーーヨナ」
「ユンの望みはなあに?」
「皆が笑って暮らせる国を作ることだ。それから」
「それから?」
「ーーイクスを、神殿に」

一旦言葉を切り、一呼吸あけて今度はゆっくりと噛み締めるように、そう告げた。

俺の屋敷で保護するんじゃなくて、預言者イクスが本来在るべき場所へ。
それが、俺の願い。幼い俺を救ってくれたイクスへの、せめてもの恩返しだ。

勿論それが難しいことだって分かってる。昔のように神官が王を凌ぐ権力を持つことを危惧する声は必ず上がるだろう。たとえイクスにそんなつもりはなくたって。
だから俺は此処にいる。王に次ぐ権力を確実にして、間違ってもイクスが窮地に立たされたり糾弾されたり利用されたりしないような状態を構築維持しなきゃならない。
そして、これは俺にしかできない。ヨナの手を煩わすことはできない。

「うん、そうね……ユン」

だけど、俺の王は眩しい笑顔でこう言うんだ。

「一緒に頑張ろうね」
「ーーヨナ」

「イクスは、私にとっても大切な恩人よ?だから一緒に頑張りましょう?」



それはまるで、燦然と輝く太陽のように。





艶やかに結い上げた髪を飾る大輪の紅い牡丹が、何の曇りもない女王の笑顔を鮮やかに彩っていた。










『路傍の花』ーEpisode.3 “おかえり”
太陽に 灼かれながら ともに いさぎよく いきましょう















お久し振りです。
ずっと書きたかったこの話、やっと書くことができました。
百合と芍薬と牡丹、3種類ぜんぶ書けたので満足です!

はじめから3種の花に合わせて3部作と決めていたので、構築した妄想はここまでです。
でも、また何か思い付いたらこの妄想軸で書きたいです。
その際にはお付き合いいただけたら嬉しいです♡




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はじめまして!

最近 暁のヨナにハマり、本誌にコミックスに二次と楽しんでいる者です^^
キキさんの未来予想、すごく素敵というか
ヨナの強く気高くでもハクのことについては弱いというか、そういう姿にグッと来すぎて、泣きながら全編読ませていただきました。
ありがとうございました。
また新作を拝見できる日を楽しみにしております♪
コミックスの発売、楽しみですね^^

Re: はじめまして!

蘭さま

はじめまして、キキと申します!先日はご丁寧なコメントを誠にありがとうございました。お返事遅くなりまして大変失礼いたしました……
蘭さまは最近ヨナお読みになったのですね〜
新しいお仲間に出会えて嬉しい( ;∀;)そしてブログにまで足を運んでくださってありがとうございます!
創作物への勿体ないお言葉も、本当に嬉しいです!好き勝手書いてる妄想を共有していただき感謝の言葉しかありません……!

遅筆ではありますがまた何か書きたいと思っておりますので、その際にはまたお付き合いくださいませ(*´▽`*)
プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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