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ハクヨナ前提ss『白雨』 16巻あたりの時間軸でスウォンとジュドがハクヨナを語る話。

暖かな雨が降る。




やわらかく優しく、只静かに頬を伝い大地へと落ちる雨粒を目で追い、それから彼は立ち尽くしたままその翡翠の双眸をそっと伏せた。

懐かしく愛おしい、想い出の中の少女の涙のようだと思い。







「スウォン様!」

背後からの聞き慣れた声に、ゆるりとした動作で振り返ると青年は声の主に対しやわらかな笑顔を向けた。
雨に濡れ重くなった淡い色彩の長髪を気怠げに払い、優雅でありながら無駄のない挙動で一歩踏み出す。

「ジュドさん。すみません、探させてしまいましたね」
「全くです!何時もの事ながら貴方はフラフラと!視察中に我々を撒かれるのはおやめください、本当に貴方は昔から……」
「いやジュドさん、捲くだなんてそんなつもりは」

昔から幾度となく聞いた、目の前の屈強な男が喚き散らす様を双眸を細めつつ眺め、彼には何時も怒られてばかりだなとスウォンは苦笑を洩らした。
本当に、撒くつもりはないのだ。だが、幼い頃から空都の城下を駆け回り何時の間にか染み付いた『撒き方』が、無意識のうちに行動に出てしまう。

(困りましたね……)

ふと意識を過去に跳ばせば簡単に姿を現す、黒髪の少年。唯一無二の親友だと、そう思っていた。
隣で笑う、切れ長な双眸の端正な顔立ちをした少年は、記憶の中で精悍さを増し、厳しい表情で眼前に立ち塞がるーーその背後には、嘗て妹のように慈しんだ紅い髪の少女。

脳裏に浮かぶ映像を振り払うように、彼は濡れた髪を掻き上げ肩を竦めてみせた。

「三つ子の魂、ですかね」
「……また、感傷に浸っておいでか」
「昔を懐かしんでいただけですよ」

にこにこと、柔和な眼差しのまま笑う年若い主を見据え、ジュドと呼ばれた男は眉を顰め、大仰な溜息を洩らす。

「難儀な事ですな」
「お互いにね」

即座に返され、ジュドは益々顔を顰めた。見透かされている。そう、自分こそが感傷に浸っているのだと。
情を捨て去るには長過ぎる時間を、彼は彼の主と主の親友、そしてその二人が護り慈しんだ少女を見守ってきた。
落命したと聞かされた。その彼等が秘かに生きていた。突然目の前に現れた紅い髪の少女を、斬り捨てる事など思い付きもしなかった。
主の進む道の障害となる可能性は、排除すべきであるというのに。


排除。あの、方をーー


「……外套位被って下さい。ずぶ濡れになりますよ」

逡巡する思考に終止符を打つべく、男は彼の主へと歩み寄り己の左手で握り締めていた、主を探し回った際に雨に濡れいささか湿ってしまっている大判の布を、同じくしっとりと濡れた主の頭部に被せ、乱暴とはいかないまでも丁寧とは言い難い手付きで主の淡い色彩の髪を拭っていく。過保護ですねぇ、と戯けて笑う美貌を凝視しながら。

「風邪でも召されたらどうします」
「大丈夫ですよ、これでも鍛えてますから」
「それとこれとは別問題です」

口煩く、過保護。幼い頃から兄のように接してくれていた、無愛想だが心根の優しい腹心の部下をぼんやりと眺め、彼はふと彼等もこんな風に優しい時を過ごしているのだろうかと、この空の下の何処かに生きている幼馴染の二人へと思いを馳せる。

(駄目ですね……あんな風に、出遭ってしまったからでしょうか)

信念の為、全てを捨て去る覚悟を決めた。そして彼等を切り捨てた。
捨てた筈なのに、想い出は尚色鮮やかに脳裏を過るのだ。

「何処かで雨宿り、しましょうか」

一旦瞑目し、深呼吸する。それからゆっくりと双眸を開き、スウォンはジュドの返答を待たず歩き出した。一歩遅れて、力強い足音が続く。

雨に覆われた街に、二人分の靴音が響き渡り、やがて消えていった。








音もなく降り注ぐ暖かな雨が街の喧噪を覆い尽くす。午後の街並は只、静寂に包まれていた。

石畳に厳かに響くのは、己と、隣を歩く男の靴音。
視界に映るのは雨に霞む雑踏と、先を急ぐ人々の後ろ姿。それから、足早に通り過ぎようとする若い女性の軽やかな足取り。

すれ違い様ふわりと漂うのは、懐かしい花の香り。

その清涼な芳香をスウォンは知っていた。特別貴重でも珍しいものでもない、王族の娘が纏うには些か廉価に過ぎる香を、しかし彼の従妹は普段から好んで焚き染めていた。清廉で凛とした香りは実に彼女に似合っていたと記憶している。この一年余、指南役か女官あたりにもっと姫らしく高貴な香をとでも嗜められたのか違う香を焚き染めていた事もあったが、その度に親友だった男があんたには何時もの香程度が似合いだと、からかうように従妹に告げては彼女の怒りを買っていたことを思い出し、知らず笑みが零れる。

似た背格好、同じ香。通り過ぎる女性は決して彼女ではないのだと痛いほど分かっているのに、つい視線で追ってしまう。


深く被った外套から覗く、波打つ長い髪は暁の空の色では、ない。


視界の隅から消えた女性に従妹の面影を求め振り返りたくもあり、またその行為の無意味さ故に振り返りたくないとも思う。
結局、スウォンは横を歩く腹心へと視線を向ける事でその場を遣り過ごす事にした。

見遣った先に映し出されたのは、苦々しく口許を引き締めた男の渋い表情。
彼も同じなのだ。同じように彼等の想い出を振り切れず、彼等の面影を、欠片でもと求めている。

何故だかそれが、スウォンには嬉しく思えてならなかった。








「雨、止みませんねぇ……夕刻迄に戻りたいですよね」

雨宿りにと立ち寄った、天候の所為か他に客も見当たらず、小綺麗で落ち着いた雰囲気の茶屋の窓辺から雨の街並を眺めつつ、スウォンは甘い香りの上質な紅茶を口へ運んだ。
沁みるような暖かさが、雨に濡れた身体をゆっくりと癒していく。翡翠色の瞳を閉じて、彼は大きく息を吐いた。

「美味しい紅茶ですねえ、暖まりました」
「それは何より。暖が必要な状態に陥らないで頂きたいものですが」
「ジュドさんは大丈夫ですか?怪我に響いてやしませんか?」
「そう思うなら、雨の中俺を撒くような真似は控えて貰いましょうか」

見事なまでの応酬に苦笑を洩らし、すみませんと一言置いてスウォンは先程の既視感を、彼等の面影を改めて思い返した。想い出の中の二人は、街を包み込む雨のように、この身を癒やす紅茶のように、暖かく優しい。

「……想い出というものは、中々厄介なものですね。捨て去ったつもりで居ても唐突に顔を出す」
「否定はしませんが、それを言い訳にはしないで頂きたい」
「……そうですね。ですが、果たして次は本当にーー斬れるのだろうかと、そう思うのです」

普段は……殊更即位後は決して見せる事のない、所在無い様子で言を紡ぐ主の姿に、ジュドは苦虫を噛み潰したような表情で眼前に置かれた茶碗を些か乱暴な仕草で取り上げ一気に喉に流し込むと、彼の迷いを断ち切るべく口を開いた。

「貴方がどれ程あの男に未練を残そうが、あの男には貴方のような迷いは見受けられませんでしたがね」

吐き捨てるように言いながら、数日前の彼等との遭遇を思い返す。あの男は相変わらず強く、正直な処太刀打ち出来なかった。
今も尚身震いを覚える、男の全身から溢れ出た戦慄を覚える威圧感と激しい憎悪。殺意のみで構成された、捨て身とも取れる一連の攻撃に理知はなく。しかしその様は獣じみているにも拘らず、圧倒的だった。

「あの男は本気で貴方を殺しに掛かっていた。躊躇など微塵も感じられなかったーーもう、遅いのです。あの男を惜しむなら、貴方は始めからあの男を引き入れるべきだった」
「……それは、無理でしょう。彼の行動原理は全てヨナにあります。例え私がどのような信念を語ろうと、彼はヨナを裏切りはしない」

淡々と、だが寂し気に言葉を紡ぎ出すスウォンに向かい、ジュドは改めて問うた。何処か引っ掛かりを覚えていた、主への疑問を。

「貴方は、王位を盤石なものとする為にヨナ姫を后に据える事を良しとしなかった。あの現場を目撃された以上、実現はされなかったでしょうがーー貴方は始めから、あの二人を切り捨てるおつもりでいた。何故、なのです?奴の能力地位身分、どれを取っても貴方の強力な武器になったでしょうに。奴を取り込む為ヨナ姫を、とはお考えにならなかったのですか?」

それとも、父君を弑した先王の娘を妻に迎えるなど到底出来ないとのお考えか?
重ねられた問いに、スウォンは苦笑しゆるりとした動作でかぶりを振った。

「父の件は、大義名分に過ぎません。実際私が現場を目撃した訳ではない。確かに父の件が真実なら先王を赦す事は出来ない。ですが、妹とも思っていた彼女を憎む事はーー」
「真実ーー?」

驚愕に男の双眸が見開かれる。真実ならとはどういう事だ。先王の件が真実ではない可能性も否定出来ないと言う事か?つまりはーー

「ああ、勿論もたらされた情報と証拠はある程度信頼に値するものでした」

強張ったジュドの表情を一瞥し、スウォンは即座に彼の疑問を払拭しに掛かった。未だ霞む真実の欠片は用いずに。

「ですがジュドさん、ご存知の通り情報や証拠は容易くでっち上げられます。ですから私はそれを完全に信じる事はなかった。捨て置いても良かったのです。即位を待つ事も出来ました。先王……叔父が、理想を只体現するだけの統治を行わなければーー」
「ならば尚更、何故貴方は……!」

思わず立ち上がり、椅子を蹴倒しそうな勢いで声を荒立てるジュドに対しまあまあ落ち着いてと宥め、スウォンは困ったように肩を竦め、微笑う。

「ヨナと婚姻を結び王位に就けと、ハクには何度か言われましたよ」
「……奴なら、そう言うでしょうね」
「そうですね。ですがーー」

一旦言葉を切り、スウォンは翡翠の双眸を彷徨わせながら逡巡する。そして観念したように深く溜息を洩らし、次の言葉を待っているだろう腹心へと向き直った。

「甘いのだと、叱られるかも知れません。ですが私には、大切な幼馴染であり妹のように慈しんできたヨナを……それも、幼い頃からの憧れであり目標でもあった親友が、宝物のように護り命を賭して愛し抜く華を……王位の為に手折る事など到底出来ません。例え彼がそれを望んでいたとしても」

哀し気な、それでいて満ち足りた表情を浮かべ語る主の、初めて聞かされた心の内は別段驚くような内容ではなく、そしてそれはジュドが長年見守り続けてきた心優しい少年そのものの言葉だった。だが。

「ーーそれを、あの男が喜んで聞き入れるとお思いか?」
「まさか……ですから私は、それこそ大義名分を以って彼女の身分を剥奪し放逐する事が最善策だろうと考えました。例え彼女が王女でなくとも、ハクは彼女を見捨てないでしょう」
「あれが黙って従うとも思えないが……」
「納得出来ずとも、彼女の命を取引の材料に使えば良い」

結局、机上の空論で終わりましたが。
呑気に笑いスウォンは窓の外の風景へと視線を移す。雨は、相変わらず音もなく街を濡らし続けていた。

「切り捨てる覚悟を決めながらも、私は彼等に生きて欲しかった。何処か遠く離れた場所で、只の男と女として生き続けてくれたらとーー」
「冗談ではない!」

甘いどころではない主の言い様に、ジュドは今度こそ椅子を蹴倒しそうな勢いで腰を上げ、苛立ちも露わに両手を机に叩き付けた。

「只の男と女、だと⁉︎あの男にそのような真似が出来る筈はない!十年もの間己の心を殺し、如何なる時も姫を姫としてしか扱わぬあの男に!」

一気に捲し立て、彼はぎり、と唇を咬み締めた。不機嫌な面持ちを隠そうともせずに、ゆるりと座したままの主の姿を見下ろせば、主は何やら腑に落ちないといった表情で、そうでしょうかね?などと呟いている。その様子に途方もない脱力感を覚え、男は鍛え上げられた両肩をがっくりと落とした。
あの男が……否、我々が彼女を、決して手に入れる事の叶わない至高の存在であると当然の如く腹に叩き込んでいると、同じく至高の存在である主には解らないのだ。

(大体あれは俺と同じ、曲がりなりにも将だぞ。将たる者が己が主君を、例え手出し可能な状況に陥ろうと、はいそうですかと取って喰うものか!)

まるで己自身が侮辱されたかの様な不快感と怒りを覚え、彼は咄嗟にそれを宥めようと瞑目し呼吸を整えた。主に対し抱くにはこの感情は不穏に過ぎる。

(お前はきっと、最期の瞬間まで主を奉じ闘うのだろう。この俺と同じように)

暗転した視界に、弟にも思えてならなかった黒髪の少年の姿が浮かび上がる。端正だが幾分野性味のある溌溂とした笑顔が印象的な子供。細身ながら身体能力に優れ、意外にも頭脳明晰なその子供は、生まれ持った素質と風の部族長の養子という立場故に将としての将来を期待され、また本人がそれを理解していた為か、持て余していた己の心を結局は捨てられぬまま腹の底に沈め。
時にその様は見ていて辛くもあったが、明晰な頭脳故か性格故か、王女の従者として登城する頃には見事なまでに己の心を隠す術を会得していた。

(将とはかくあるべきと、あの時俺はお前に教えられた)

「あれがあれなりに、時間を費やし見付け出した落とし処を、今更容易くは捨てられんでしょう」
「……そう、ですか」

今ひとつ納得出来ないといった様子のスウォンを見遣り、ジュドは本日幾度目かの溜息を洩らした。
あの男の……我等将の心など国王である主には理解出来まいし理解する必要もなかろう。ならばこの問答は無為という事になる。そうだ、今はそれよりもーー

「スウォン様、今のお言葉……聞かなかった事に致します故、貴方もどうかお忘れ下さい」
「……忘れる、とは」
「言葉通りです。そもそも我々は彼等が既に落命したものとして処理している。だからこそ俺は、あの男が今後我々の前に立ち塞がった時にのみ奴を斃せばいい。だが、彼等が何処かで生きていると認めた瞬間から、俺は奴を草の根を掻き分けてでも捜し出し斬らねばならなくなる」

貴方が彼等に、生きて欲しいと望むのならばーー

静かに、だがはっきりと告げられたジュドの言葉は彼もまた自分と同じように、心の底では彼等の生存を願っているのだと雄弁に語っていた。
相変わらず仏頂面の腹心に向かい、スウォンはやわらかな、思わず見惚れてしまうような極上の笑顔を浮かべる。

「ありがとう……ジュドさん」
「一応、忠告しておきます」

懐かしい笑顔だと、嘗ての日々を思い出しながらも、口を開く。

俺とて生きて欲しいと望んでいる。
赤子の頃から側に仕えた、紅い髪の至高の少女にこの世界の何処かで。俺の手の、届かぬ場所で。

「仮に彼等が貴方の望み通りに生き続けたとして、何時の日かーー雷獣の血を継ぐあの方の御子が、貴方を玉座から引き摺り下ろしに来るかも知れない。貴方の望みは、そういう事です」

貴方の、彼等への想いは貴方の全てを奪い去る事も有るのだと。
何かを堪えているような、抑えた声音で綴られる男の言葉を心の内で辿りながら、スウォンは僅かに双眸を細めふ、と笑みを洩らした。

「ーーそれはまた随分と、気の長い話ですね……」

先の楽しみが出来ました、とばかりの、妙に嬉しそうな主の口調に眉を顰め、何か諫言をと考えるも、ジュドが口を開く前にやはり楽しげな声が彼の耳朶を打つ。

「十五年、二十年後に未だ私が王位に就いていて、その時既に為すべき事を全て為していたならーーそして、その子に資質と、高華国の為の揺るぎない信念が有るならば、私は彼等の子に喜んで王位を譲りましょう」

独り言のように、そして何気ない夢を語るように。
きっと強い子がやって来ますよと笑い、スウォンは白く霞む窓の外の風景へと視線を向けた。雲の切間から射し込む光が酷く眩しい。何時か彼と見上げた空の色に似ている。

ああ早く城に帰らないと。紅い髪のあの子が、待っているーー

「ジュドさん……そろそろ、戻りましょうか」

ああ、また。
想い出と現実が混濁する。本当に困ったものだと苦笑しつつ、スウォンは昔と変わらぬ優雅な動作で席を立った。


何時の間にか、雨は上がっていた。









濡れた石畳を、其処彼処に点在する水溜を避けつつ歩く。

『ジュド!』

ざわめく雑踏の何処からか、懐かしい声が己を呼んだ気がして咄嗟に振り返るが、その先には誰も居ない。

(ーー姫様?)

徐に立ち止まり意識を周囲に拡散させる。だが、彼の注意の及ぶ範囲には嘗て彼が側に仕えた少女の面影の一欠片さえ存在していなかった。

(呼ばれたのか?ーー何か、あったのだろうか。いや、杞憂か。姫様にはあの男が側に控えて……しかし)

「ジュドさん?どうかしましたか?」
「ーーいや、何でもありません」

歩みを止めた腹心に気付き、彼の主が振り返る。訝しむというより寧ろ気遣うような主の言葉に、彼の思考は霧散した。

(何を考えている。あの方はもう、俺の主ではないのだ)

何処にでもいる少女のような、屈託のない笑顔で俺を呼ぶあの方は、けれど王統を繋ぐ唯一無二の至上の存在で。
彼女に触れる事が出来るのは国王となる者のみであり、決してこの類稀な大輪の華を他の誰にも触れさせてはならないと、其れこそが己の役割だと、そう思っていた、のに。

(ーー生き存えて欲しい。だが……もう二度と、会いたくはないものだな)

「失礼しました。さあ、帰りましょう」

主に対し軽く会釈し、ジュドは進むべき方向を見据え今度は足早に歩を進めた。

(そうだーー姫様は、あの夜亡くなられたのだ)

二人分の靴音が小気味良く石畳を鳴らす。

(世継を産むべき王女は、もう居ないのだ)

もう会いたくない。会ったとてあの方は、あの紅い髪の少女は王女ではない。この先、彼女が子を携え再び姿を現そうと……子があの男の血を継いで居ようが居まいが、その子供は只の子供なのだ。

そうでなければならない。そうでなければーー俺は。

祈りであり呪詛でもあるような、相反するようでいて只一つを願う感情。
雨上がりの空を見上げれば、何時かあの方と共に眺めた空の色と同じ。








雨上がりの街を一陣の風が吹き抜ける。
水の匂いを孕んだ空気は、年若い王とその腹心の頬を撫ぜ、彼方へと。

帰路を急ぐ主従の記憶に今尚鮮やかに蘇る紅の姫が纏う芳香は、雨に掻き消されたのか風に散らされたのか、その欠片すら残されていなかった。









『白雨』
其れは優しく、貴女と過ごした記憶のように。











確かなものは闇の中、って事で相変わらず情報が少なく評価が難しいスウォンですが、今回最大限好意的な解釈を。
本当の所はどうなのか。もっと腹の中ドロドロしてる方が好みなのですが、人間らしく生きるヨナと対比させてる感があるので機械的に粛々と、な方向性でしょうか。

ジュドがハクに夢見てる感じになった…あと仲間意識と同情と少しの尊敬の念と、同族嫌悪的な。
実はジュドヨナめっちゃツボなんですが!ってか、将来の国母と思い敬愛と憧憬と忠誠の対象だった主君が立場的に自分と同等以下の後輩に降嫁したら心情的にどうよ…って話。

あとスウォンはともかく、周囲の大人にはハクの気持ちはだだ漏れだったと思う。


前述したナンバーをイメージに、ポエムちっくにする筈が無駄に長くなりました。
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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

そろそろ、スウォンサイドの話が原作で出てこないかと思っているのですが、どうなのでしょうね。(私はコミックス派でネタバレしないタイプなので、現在の本誌は分からないのですが)

ジュド将軍は割と好きなんです。グンテ将軍とのかけあいは大好きで(笑)ハクとジェハもそうですが、少女漫画でありながら、男同士の友情もさりげなく描かれるところが良いですよね。

ジュド将軍のハクへの情がすごく良かったです。
16巻で姫様への想いは出てきましたが、ハクへの情は描かれなかったので。

自分と同等の立場で、まっすぐに国を、自分の部族を、そして姫を守っていたハクに対して、悪い感情を持っていたはずはないと思うのです。グンテ将軍と同じく、今後の国を担う有望な若者と、期待していたのではないかと。

それなのに、主君が王座につくためとはいえ、国王・皇女弑逆の罪を着せ、地位身分、故郷全てを捨てさせる事になった事への遣る瀬無さとか、罪悪感とかないのかな~なんて。元々、真面目で情に篤い人柄であれば尚更。

スウォンはまだ心中が明かされていないので、どうしても感情移入ができないですね。子供の頃とかはふつうに好きなんですけど。
ただ、若葉風や16巻を読むと、スウォンが策を立て、ハクが実行部隊として動く、このコンビは最強だったろうなあと思ってしまいます。かつてハクが願っていたように、スウォンが王となり、ハクが右腕として、共に国を守っていけたら。
まあでも、そうなると、ヨナは頭に花咲いたお姫様なままだし、四龍は集まらないし、ゼノは孤独なままだし、それはそれで困るか(^^ゞ

スウォンが、2人の子がもし現れたら王位を譲って良いというくだりは、ぐっとくるものがありますね。
自分が王として、やるべき事を果たした後なら、2人や2人の子になら、討たれても良いと思っている節があるように感じます。

キキ様は幅広いテーマで書いて下さるので、とても読み応えがあります。今後も楽しみにしております。

Re: No title

prinさま

原作でのスウォンサイドの話、気になりますよね。
特に、スウォンが何を思い何を為したいのかが知りたくて仕方ありません。

そして!prinさまもジュド将軍お好きですか!ジュドさん素敵ですよね。無愛想だけど情に篤くストイック。加えて外見と年齢も、彼の全てが私のツボです 笑
もしもハクが年相応の外見性格だったら、私ジュドさんメインでss書いてたんじゃないかって位好きです(*ノ∀`*)
男同士の友情もそうですけど、この作品って少年漫画っぽいところがありますよね。バトルシーンとか凄いなって思いました。普段少女漫画を読まない私が引き込まれた所以の一つでもあります。

ジュド将軍は、立場的に姫やスウォンのお目付役みたいな感じだったのかなと思っているので、二人の幼馴染であるハクのことも昔から見てきたんだろうなあと。
グンテさんもジュドさんも、きっとハクに期待していたのだと思います。国を護る心強い同志だと思っていたに違いない……
ジュドさんはグンテさんと違って先王の死の真実を知っていますからね。罪悪感は多分半端じゃないのではないかと思います。でも、スウォンとの一蓮托生を決断した時から自分の感傷や罪悪感に蓋をしているんじゃないですかね。スウォンは感情を捨て去ってるきらいがありますが、ジュドさんは腹の底に沈めてる感じ。
16巻で、スウォンに「為すべきことを為して〜」みたいなこと言ってましたが、同時に彼自身に向けた言葉のような気がしてなりません。
スウォンが王となり、ハクが右腕として共に国を守っていけたら……きっとジュドさんもグンテさんもそれを望んでいたのでしょう。何事も無ければ、皆がパパを説得出来れば間違いなく訪れたであろう理想を叩き壊したスウォンの志、それを止むなしとしたジュドさんの心の内が本当に気になります。早く原作で語って欲しいのですが、先は長そうなのでそれまでは妄想でお茶を濁そうかと思います 笑

スウォンは、そうですね……16巻を読む限り自分が王としてやるべき事を果たした後なら、姫やハクに討たれても良いと思っているように感じました。とはいえ、彼は北島マヤばりの名演技で日々を過ごしているような気もするので、実のところは全く分からないのですけど 笑

私は書きたいテーマにハクヨナを絡めているだけのことが多いので、ハクヨナ?なssばかりでアレですが、そう言って頂けて嬉しいです!有難うございます!
プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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