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ハクヨナ前提ss『茜雲』 風牙ポニテ女子とテウ将軍。弟妹が、兄を想う。

稽古を終えて屋敷の外回廊に出ると、床に胡坐をかき外の風景を眺める兄弟子の姿が視界に映った。

兄弟子といっても、彼は今や風の部族の若長であり高華国の五将軍の一人だ。
勿論それは彼にとり不本意で、まさに降って湧いた災難といっても過言ではない。

近付く私の気配に気付かぬ筈はないでしょうに、微動だにせず彼は真っ直ぐに何処かを見据えている。

「はぁいお疲れ、テウ将軍」
「……んだよ、てか将軍ってのはよせ。何かこう、気持ち悪い」

努めて明るく声を掛ければ、彼は予想通りとても厭そうな顔をして私を振り返った。

「じゃあ、若長?」
「……」

眉を寄せて、まるで不審者を見るような目で私を凝視する彼の仕草が何処となく私と彼の共通の兄弟子に重なって、知らずほんの少しの笑みが零れる。

私は突き刺さる視線を無視して彼の隣に腰を降ろし、同じように胡座をかいた。
見下ろす形で視界に映るのは、私達が護るべき風牙の都の賑わう街並。
何時もと変わらないように見える街の姿を眺めながら、私は昼間、稽古前に屋敷近くの広場で遭遇した若い娘達の痛ましい騒ぎの原因を口にした。

「ハク様が宮廷の追っ手に殺されたそうね。ハク様に懸想する街の娘達が泣き喚いてたわよ。全く、宥めるのに骨が折れたわ」
「……らしいな」
「何よあんた、随分冷静じゃない。敬愛する『お兄様』が殺されたってのに」
「あの人が追っ手ごときに殺される訳ねえだろ。師匠だってそう思ってるさ」

どうせ胡散臭い調略だの陰謀か、情報撹乱じゃねえのと詰まらなそうに吐き捨て。
それから彼は普段通りの表情を私に向ける。

「お前こそ、愛する『お兄様』の訃報の最中に平然と稽古かよ」
「ふん、あの人がそう簡単にくたばる訳ないでしょうよ」

馬鹿にしたように鼻で笑ってみせたら、彼はへらりと戯けて笑う。何時も通りの笑顔だ。

そう、あの人が殺されたなんてある筈がない。
あの、雷獣と呼ばれた天才が。私達の誇りが、斃れるなどと。

彼が同じ思いでいることを確認し、それから私は夕暮れの空を見上げた。
切なくなるほどに見事な茜雲は、あの人と共に去っていった、儚い天女のような姿の娘の髪を思い出させる。

「ーー大体ね、あの『雷獣』が唯一と定めた女を遺して早々にくたばる筈がないでしょう」

だから、あの人は大丈夫よ。
そう言い切って視線を戻し隣の兄弟子に笑い掛けると、途端に彼は困惑した、気不味そうな表情で私を見詰めてくる。

え、何なのコイツ。
もしかしたらハク様があの娘を好きなんだとかーー単なる恋情よりも寧ろ重い感じがしたけどーー気付いてない訳?

「あんたさ、あの人見てて気付かなかったの?」
「ーーや、何となくは……でも、その、お前はーー平気なのかよ」
「私?平気って何がよ」
「だから……お前、ハク様のこと」

ずけずけと物を言う彼にしては珍しい、とても言い辛そうな、視線を彷徨わせながらの言葉に私は思わず目を瞬かせた。

ーーああ、そういうこと。
彼を困惑させる原因にーーそれは彼の勝手な思い込みではあったけどーー思い当たった私は思わず吹き出した。

「そりゃあ好きよ。当たり前じゃない。あの人は私の誇りで、目標で、憧れだわ。だけどそれ以前にあの人は私の『お兄様』なのよ。妹としては兄の幸せを願わないとね」

忌憚のない本心を告げるけれども、彼はどうにも納得出来ない様子で。

ああもう面倒臭い。私に気を回す暇があるんなら、あの人に黄色い声を上げていた娘達に同じ科白でも言ってやればあんたの株も上がるんじゃないの?
それどころかコロッと落ちる女なんてきっと山ほど居るでしょうに。

何て言うか……実に青臭い。

「あんたさあ、女が男に好きと言ったら総てが総て惚れてるとか思ってたりすんの?馬鹿馬鹿しい」
「なっ……!うっせえな大体お前、何時もハク様ハク様って」
「あんただって何時もハク様ハク様言ってたじゃん。じゃあ何さ、あんた実はあの人に対して『素敵!抱いて!』とか考えてたりしたの?」
「……気色悪い想像させんじゃねえよ」

思い切り馬鹿にしつつあの人に聞かれたら只では済まなさそうなことを告げたところで、漸く彼はげんなりした顔を見せた。
ああもう、げんなりするのはこっちの方だわこの単純馬鹿。

「ま、何時か帰って来るでしょうよ」

『気色悪い想像』を本格化させてやるのも一興だけど、後が面倒そうなのでとりあえず話を戻してやる。
それから私は再び夕暮れの空を眺め遣った。

すると彼もまた、そうだなと一言置いて私の視線を追うように茜色に染まる空を見上げた。


やがて日が沈めば、あの娘の髪のような茜色は消え去ってしまうけれど。
次の朝には東雲となり、きっと鮮やかに空を彩るのだ。


だから、きっと大丈夫。



互いに頷いた私達は、黄昏に逐われ消え行く茜色を、回廊が夜の帳に覆われるまでずっと眺めていた。










『茜雲』
明日、また陽が昇る。










色々妄想が膨らむ風牙ポニテ女子。
当方は以前主張した、雷獣の妹弟子説を引き続き推しております。

しれっとテウ将軍の嫁になってたらそれはそれで面白いかもと、変な妄想したりとか。

作中、一言も発してない彼女。捏造どころじゃない事になってるのはご愛嬌。
そしてテウ将軍がどうも掴めないのであります。




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ジャンル : 小説・文学

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No title

風の部族大好きなんです!
原作でも出番は少ないのに、この絶大な大好き感は何なのか(笑)

この女の子はあれですよね?2巻でハクに、「こいつをみろ。あんたと同い年だがあっちこっち違うだろ?」と抱き寄せられてたナイスバディな美人さんですよね?

テウ・ヘンデと、この美人なお姉さんと、髪を結わえたお兄さんは、若葉風で「風雅のチビ共」として描かれてたので、ハクの幼馴染なのかな~と勝手に思ってます。皆腕が立ちそうですよね。風の部族は女性も腕が立つ人が多そうで、かっこいいなあと思います。

しかし、風の部族のハクに対する絶対的な信頼度は半端じゃないですよね。
グンテ将軍も通じるものがありますが、グンテ将軍は10年以上将軍職についていて、戦で戦果もあげているので、民から慕われるのは当然な感じはするのです。

対してハクは、将軍やってたのは僅か3年で、しかもその間、風雅の都にはいなかったんですものね。
普段は武器屋のおじさんからも「バカ雷獣」なんて言われる程、気安い存在でありながら、いざという時のあの信頼度はやっぱりすごい。
2巻で皆の前で部族長として命令を下すシーンが凄まじくカッコ良くてカリスマ性さえあって大好きなんです!ムンドクも「生意気な」なんて言いながら、頼もしく思ってたんだろうになあ。

16巻ラストの五部族会議の冒頭で、各部族長のフルネームが出てたんですが、テウは「テウ将軍」で、「ソン・テウ将軍」ではなかったんですよね。
テウは「ソン」の名をまだ継いでないんですかね。
まだ未熟だからなのか、それとも、いつかハクが帰ってくると信じていて、あえて継いでいないのか。ついつい深読みしてしまいます。

今後また原作で風の部族が大きく取り上げられる時が来ると信じているのですが、こういう風の部族を取り扱ったSSを見ると嬉しくなってしまいます(笑)
風の部族への愛ゆえに、ムダに長くなってしまって申し訳ありません(汗)また楽しみにしております!

Re: No title

prinさま

私も風の部族大好きです!
絶大な大好き感、そうですね何ですかね 笑
上下関係より信頼関係で成り立ってるところとか、アットホームな感じとか、あと何よりムンドクさまが大好きだからですかね、私は。

そうですそうです。あのナイスバディな美人さんです!
名前はおろか台詞もないのをいいことに、好き放題捏造してしまいましたΣ(ノ≧ڡ≦)
風の部族の女戦士、きっと他にもいますよね。いつか原作で描いて欲しいなと思っています。
風の部族のハクに対する絶対的な信頼は、きっと彼の強さと人柄によるものなんでしょうね。部族長としてのキャリアは短いですが、彼が雷獣の二つ名を戴いたのはローティーンの頃だと原作から推測できるので……
風の部族は少数精鋭の戦闘集団と見受けられますし、やはり天才的な戦闘能力が彼の地位やカリスマ性を下支えしているのかなあと思っております。
それでいて、上下関係を感じさせない彼の気さくなキャラクターがより皆の心を掴んでいたのではないでしょうか?

テウが「ソン」ではないというのは、そうですね私は単純にテウがムンドクの養子ではないのだと思っておりました。「ソン」って、所謂苗字なのだと理解していたのですが……違うのかな( ๑´•ω•๑)
火の部族の次男坊も「カン」名乗ってますし。
でも、いつかハクが帰ってくると信じて敢えて継いでないのかもとのご考察はとっても素敵!妄想滾りますね……!

いつかテウやヘンデやテヨンの話も書いてみたいと思っています。可能ならハクヨナも絡めたい 笑
忘れた頃に、かとは思いますがお付き合いくださいましたら嬉しいです(*ノ∀`*)
プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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