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ハクヨナ前提未来話『路傍の花』ーEpisode.2-0.x ヨナ、ハク。補足的番外。雷獣と芍薬の話。

月白に、薄紅を一滴。

桜色よりも淡い、限りなく白に近い色彩の花弁が幾重にも重なる大輪の華。


競うように咲き誇る、鞠にも似た円い花が空へと伸びる深緑の先端を飾り、初夏の庭園を涼やかに彩っていた。

東屋の長椅子に腰を降ろした私は、真昼の陽射しを浴びて一際白く輝く、艶やかな白絹で編まれた無数の小さな鞠が深緑の絨毯の上に敷き詰められたような光景を眺め、感嘆の溜息をほう、と洩らす。

「何て綺麗なのかしら……」
「確かに、こうして眺めると見事なもんですね。まあ、王宮の庭園一面に芍薬を植えるなんてお人はあんたくらいだと思いますがね」

東屋の円柱に凭れ掛かり、私が見ているものと同じ光景を視界に映した幼馴染であり護衛であり片腕でもある男は、私の言葉に同意しながらも何処か揶揄するように笑う。
酔狂だとでも言わんばかりの彼の科白に、私は聞き捨てならないと眉を寄せた。

「どうしてよ。庭園の植物を選ぶ時、芍薬はどうかって進言して種まで用意したのはハクじゃないの」
「あんた好みだろうと思ったからですよ。あと四年もすれば薬用として根も使えますし」

去年、種を植える時に言っていたのと同じ事を言いながら、彼は可笑しそうに肩を竦めた。

芍薬という植物がどういったものなのか知らなかった去年の私は、その名の通り薬草で、初夏には花も楽しめるというハクの言葉を信じ、かなりの数の種を植えた。
そして今、実際目にした芍薬の花は予想以上に見事なもので、牡丹にも似た艶やかなその姿に私は感動すら覚えているのだけれど。

「今迄植えてなかったのが逆に不思議なくらいよ。こんなに綺麗なのに。それとも、王宮には薬草を植えないものなの?」
「いや、薬草つーか、大分するならこの花は雑草ですからね」
「雑草?」
「そうですよ」

予想外の返答に目を瞠る私へと、ハクはまるで悪戯に成功した子供のような笑顔を向ける。

「それを知っていて、敢えて勧めたのね」
「さあ、どうでしょう」

どうでしょう、じゃない。回答は明確に是なのだ。
幼い頃から何度も見てきた、して遣ったりといった彼の笑顔がそう告げている。

半年を越える月日を掛けた、下らなくはあるけれどなかなか見事な計画だ。馬鹿馬鹿しい悪戯に手間暇を惜しまない、幼馴染の相変わらずな発想に苦笑しつつ私は咲き誇る芍薬を再び眺め遣った。

「ーー確かに、好んで雑草を王宮の庭園に植えるなんて私ぐらいしか居ないわね」
「いいじゃないっすか、野生の花を好む王ってのも。庶民的な嗜好は好印象に繋がりますよ」
「お前……本当に詭弁もいいところね」

さらりと自分を正当化するハクの言葉に私は呆れたように肩を竦めたけれど。
彼のことだ、もしかしたら真実そういった意図もあるのかも知れないと思い直し。

「本当に、有能な片腕だこと」
「そりゃどうも」

どちらからともなく笑い合い、それから私は長椅子から立ち上がるとゆっくりと歩を進め、柱に凭れ掛かるハクの正面に立ち指先で彼の頬に触れた。

「ーー姫さん?」

驚いた様子で私を見詰める紺青の双眸を背伸びして覗き込み、その頬へと指先の後を追うように唇を落とす。

「何すか、悪戯の成功報酬?」
「ふうん……やっぱり悪戯なのね」
「ご不満で?」
「ーーううん」

囁くように告げ、それから啄むようなくちづけを交わす。

不満なんてない。昔のまま変わらないのだと思わせてくれる、お前の悪戯は酷く私を安心させる。

「ねえ、ハク。私は芍薬の花に似合っているかしら?」
「姫さんが芍薬に?姫さんに芍薬が、じゃないんすか?」
「うん。私が、よ」

戯れるように幾度も唇を重ねながら、やはり戯れに問うてみる。
その問い掛けの意図が掴めぬ様子で首を傾げるハクに私は真意を告げることはせず、もう一度。

「この花に、私は似合う?」

燦然と輝く初夏の陽射しを浴びて力強く艶やかに咲き誇る大輪の華。
反面、何処にでも根を張り何度も冬を越すという強靭な生命力を持ち。
単に見る者を楽しませるだけでなく、薬草としても重用されるという。

それでいながら飽く迄も野生の雑草だというこの植物の在り様が、まるでお前のようだと思ったから。

「そうですねえ……まあ、似合うっつーより薬草としての汎用性と生命力は姫さんにそっくりだとは思いますが」
「ーー無礼者」

少し困ったような表情で、それでも戯けてそう告げる彼に、黙りなさいと私は一言置いて。
言葉通りに黙らせるべく、彼の首に両腕を絡めた私は深く深くくちづけて。

一時限りと知ってはいるけれど、その減らず口を塞いでやった。



私が封じた言葉の代わりだと言わんばかりにゆるりと口内を侵す彼のくちづけと、抱え込むように私の背中に廻された大きな掌が、長い指が密やかに躰の線を辿りこの身の内と外に、着実に小さな焔を落とし込み浸透させていく。

時折、様子を確かめるように身を離し私の顔を覗き込む彼の艶やかな表情に視線が奪われる。


心身を癒す薬効と、何処ででも咲き誇れる強かさとそれから、他者を惹き付ける華やかさ。



やっぱりお前のようだわと思いながら、私は痺れるような甘い毒に身を浸した。











『路傍の花』ーEpisode.2-0.x “ハピネス”
大切なことを、易しい言葉で。










女王陛下のサロンに芍薬を植えるという野望をとりあえず達成しました。

芍薬という植物、知れば知る程雷獣を彷彿させるのです、が。
花言葉は「恥じらい、はにかみ、謙遜」ですってよ。
ちょっと誰それ。てか余りにも雷獣と掛け離れてて吹きました。
芍薬は『花の宰相』という、これまた妄想の膨らむ異名も持っているのですが、宰相が恥じらってたら仕事になんないよね……

短い番外ではありますが、書いててとても楽しかったです。
とにかくこれで、心置きなく腐葉土になれます私……!



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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

お邪魔いたします。ブランシュと申します。度々失礼いたします。
今回このお話を読ませていただいて、私は女王付きの侍女になりたいと思いました。2人きりの時間を過ごしている2人に目通りを頼みに来た人に「お二人は只今プライベートなお時間ですので、お目通りはいたしかねます」とかなんとか言って、2人の邪魔をするものは許しません!的な侍女になりたいです(←アホです)それほどこのお話のヨナもハクも、落ち着いてて幸せそうだなと。国政は大変で仕事は山積みだろうけど、この時間は確実に満ち足りた時を過ごしているんじゃないかと。そんな読んでるこちらが幸せな気持ちになるようなストーリーでした。
そしていつものように、庭園を渡る風の音が聴こえてくるような素晴らしい情景描写で、こちらもまるでその庭園の何処かに居るかのような。そんな幸せな清々しい気分にさせていただきました。
どうもありがとうございました。

Re: No title

ブランシュ様

今晩は!コメントいつも本当に有難うございます。
女王付きの侍女、ああそれは是非!邪魔者を排除しつつ2人を見守ってやって頂きたい。
私はその辺の縁石か、東屋の長椅子にでもなって2人の様子をじっくり観察いたします。
2人とも落ち着いてて幸せそう、ですか!良かった〜
王様の仕事はきっと年中無休に近いでしょうし、ストレスフルだと思うのですが、そんなハードな職務の中でも幸せな時間を捻出する2人を書きたかったのです。
お伝え出来て本当に良かった(*ノ∀`*)

そして、少しでも幸せな気分になって貰えたのなら私も幸せです。
何の憂いも無い幸せな2人を、頑張ってまた書こう!と素直に思いました。

とても嬉しいです。
本当に有難うございました!

No title

キキ様

こんばんは、みちるです。相変わらずキュンキュンくる話を
ありがとうございます!

「あんたの好みだろうと思ったからですよ」
……これ、最後まで読んでから見直すと、結構キますねww
一人で裏読みしてニヤニヤしてしまいました。
あんたヨナ姫の好みらしいねって。(・∀・)ニヤニヤ

いやでも芍薬って雑草の区分なんですね!
実は花の中でも特に好きな花だったりするんですが、
そんなこと知らなかったのでかなり驚いてしまいました。

しかし強靭で艶やかで癒される野生って……!
でも芍薬についての文面を見れば見るほどこれってハクですねー。
やだもうキキさんの着眼点凄い!
これからは芍薬を見る度にハクと重ね合わせて見てしまうのは
避けられそうにありません(*ノ∀`)

Re: No title

みちる様

こちらこそ、キュンキュンくるコメント有難うございます〜(∩∀`*)キャッ
甘い話は書き慣れてないのでドキドキでしたが、ニヤニヤして頂けて良かったです!

「あんた好みだろうと思ったからですよ」
やった!反応有難うございます!通じたと喜んでおります!
> あんたヨナ姫の好みらしいねって。(・∀・)ニヤニヤ ←みちるさんのコメントに私がニヤニヤしてます〜
バラすと雷獣が何しでかすか分からなかったので、姫には黙っておいて貰いました 笑


おお!みちるさんも芍薬お好きですか!
あれだけ豪華なのに廉価でビックリですよね。
雑草の定義は立場によって色々ですが、その辺に自生する植物という意味で用いました。
野生の薬草であった事は確かです。
品種改良が盛んに行われた近代以降では適用されない認識かと思います(ー∀ー;)

そして!芍薬の生態が雷獣ぽいよとの私の主張にご同意有難うございます〜
芍薬の生態や利用法もそうなんですけど、コスパの素晴らしさがポイントです。派手で実用的で金になりそうな植物 笑
アジア原産の植物で雷獣を彷彿させる上に、花になど興味のなさそうな雷獣自身が知っていて、姫に勧める植物つったら他に選択肢はなかったです。

丁度芍薬シーズンですし、見掛けたら共にニヤニヤしましょう(*゚∀゚*)


プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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