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ハクヨナss『en』 ヨナ、ハク、ムンドク他。ハク誕に寄せた未来話。

空が淡墨色に染まる季節。


彼方に見える山脈の凍土を無造作に覆う、深緑と燕脂を刷毛で散らしたような色彩も、重苦しくのし掛かる厚雲に滲む白藍も、荒涼とした大地に力強く根付く植物の僅かな息吹も、舞い散る粉雪に霞み、白々と煙る。
まるで視界に映る総てが薄絹に覆われたかのようだ。

大地が色彩を失いつつある季節を、ヨナは嘗ての幼馴染と共に彼の故郷である風牙で過ごす為に訪れていた。
数年前、総てを喪い心すら失くし掛けた彼女が翼の折れた雛鳥の如く庇護され皆の暖かな心に触れた場所ーー風の部族長の屋敷の一室で、当時と同じ位まで伸びた髪を気怠げに肩から払い、ヨナは布団から半身を起こした格好で障子を開け放ち雪景色へと変わりつつある光景をぼんやりと眺めていた。

舞い降りる白銀を煌めく紫紺の瞳に納めながら、大丈夫だろうかと仲間のことを考える。きっと皆山積する仕事に追われ、忙殺されている筈だ。
やるべき仕事は沢山ある。個人ではなく皆で何かを為すということは、その規模が大きい分簡単なことではない。

「姫さん、入りますよ」

ほう、と白く煙る息を洩らしたヨナの耳に、聴き慣れた低い声が不意に届く。うん、と返せば軽くざらついた音が乾いた空気を震わせながら襖がゆっくりと開かれた。

「ーー何やってんすか、あんた。風邪引きますよ」
「この位平気よ、布団だって暖かいもの」
「子供みてえなこと言ってんじゃねえよ。あんたに何かあったら俺が『お母さん』に殺される」

それ以前にジジイに殺されるわと苦虫を噛み潰したような顔をして、ハクは大股で窓際へと向かうと無造作に障子を閉めた。

「心配症なのね、ハク」
「……普通だろ」

呆れたように己を見下ろすハクへと小さく笑い、ヨナは肩を竦めてみせる。

心配症なのはハクだけではない。せめて何処ででも出来る仕事をと申し出た彼女に、この冬だけは何も考えるなと半ば強引に風牙へと二人を送り出したのは、ハク曰く『お母さん』であるところのユンだった。

「なあ姫さん、本当に冬だけでいいのか?別に業務の中心を風牙に移転してもーー」
「春になる頃には落ち着くってユンが言ってたわ。それにしても珍しいわね、ハクが基盤の移転だなんて経費を無視した提案をするなんて」
「人を守銭奴みてえに言わんでくださいよ」
「あら、違ったの?」
「あんたなーーっと、じっちゃん……ムンドク長老が今夜の宴会の準備にやたら気合い入れてんすけど、出れますか?」

戯けた口調のヨナに対し、ハクは大袈裟に肩を落とすと思い出したように問い掛けた。実際のところは話題の転換といった目的を兼ねているのだろうが。

「うん、少しなら。ムンドクはハクが戻って来たのがよっぽど嬉しいのね」
「俺じゃなくて、あんたが風牙に来たのが嬉しくて仕方ねえんでしょうよ」
「ふふ」

暖かく優しい風の英雄を思い、ヨナはやわらかな笑顔を浮かべ瞑目した。それから、意を決したように瞼を上げ真っ直ぐにハクを見据えると静かに告げる。

「ムンドクに、会えるかしら?」
「ーー今ですか?」
「うん」

低く紡がれたハクの言葉に、彼女はこくりと頷くと唇を引き結んだ。先程までとは打って変わった真剣な眼差しに、ハクもまた正面から彼女の双眸を見詰め返す。

僅かばかりの無言の時が、周囲の空気の流れをも止めた。
まるで降り積もる雪のように部屋の冷気が折り重なり沈殿していく。

閉め切った筈の障子の外から真冬の大地が軋む音が微かに響き、閉じられた空間の静寂が痛いほど感じられた。


不可思議な沈黙に堪え兼ねたのか、徐に口を開いたのはハクの方だった。

「……あの人に今回の滞在の赦しを請うのは俺の役目でしょう」
「ううん、私が」

間髪入れずに切り返してきたヨナの真摯な眼差しと思いの外強い言葉尻に、ハクは渋い表情で暫し彼女を凝視した後、半ば諦めた様子で溜息と共に告げた。

「一応言っときますが、此処は風牙なんすよ。俺の立場も考慮して頂けませんかね」

ま、どうせ言っても聞きやしないんでしょうがね。
そう続け苦笑する、嘗ての風の部族長であるところの青年に向かいヨナもまた困ったように戯けて笑う。
気安い相手に向けられる砕けた笑顔。けれども彼女の双眸は真っ直ぐに青年を見据えたままだ。

「……忘れているかも知れないけれど、私はハクの主なのよ」

淡々と、けれど判然とした口調で紡がれたヨナの声音にハクは一瞬目を瞠り彼女の双眸を覗き込んだ。
けれど、やがて分かりましたと静かに答え、彼は凭れ掛かかっていた障子の傍の壁から身を剥がし部屋の外へと向かう。目的は言うまでもない。

彼女の言葉を主命と受け取った訳ではない。だが今更になって主従関係を強調するような言い方の中に彼女の強い意志を感じたハクはこれ以上の主張を放棄した。





話を通してきますからと言い置いて襖の奥に消えた青年の後姿を惜しむように、静かに閉じられた部屋の外へと意識を飛ばし、だがヨナは唇をきゅ、と引き結ぶと布団から起き上がり用意されていた装束に手を伸ばす。

「薄紅の襲……」

ぽつりと呟き、ヨナはゆるりとした動作で薄紅の絹を幾重にも纏っていく。

木綿の襦袢や絹の襲それぞれの滑らかな肌触りと細部にまで拘った丁寧な縫製は装束が上質なものであることを伺わせていた。
また、緋色の厚地に同色の糸で繊細な刺繍が施された上衣や、燻金と漆黒の絹糸で組まれた細帯はヨナの髪や瞳の色を変に目立たせず、しっくりと調和させている。

鏡に映る己の姿に、ヨナの表情がふわりと綻んだ。

ああ、多分この装束はムンドクが私の為に用意しておいてくれたものだ。彼は待っていてくれた。あの夜ーーハクと共に風牙を離れた時から、きっとずっと。

彼女の心に、雄大で暖かな一陣の風が緩やかに流れる。
優しく頬を撫でるようでいて、力強く背中を押すような。

それが何だか擽ったくて、ヨナは紫紺の瞳を細め零れるような笑みを浮かべた。





✴︎





久し振りに会えたその人は、とても、とても綺麗だった。

ずっと前、ハク兄ちゃんに連れられて屋敷にやって来た彼女は今と変わらず綺麗だったけど、何処か寂しそうで、すぐにでも消えてしまいそうで。
だけど今、俺を見て嬉しそうに笑う彼女は、雪の中で咲く紅い椿の花みたいだ。


そんなことを思いながら、襖の奥から己の視界に飛び込んできた紅い髪の懐かしい女性の凛とした佇まいに、少年は溢れ出る感情を隠そうともせず満面の笑みを浮かべ名を呼んだ。

「リ……ヨナ姫様!おかえりなさい!」
「ーーっ、テヨン。テヨンね?大きくなったわね!ああでも何て可愛いの……!」

ハクの代わりに、ムンドクの部屋に案内すると己を訪ねてきた、多分に幼さを残した少年の姿に過去の記憶の中の幼子が重なり、ヨナは感嘆の声を上げ少年に駆け寄った。
彼女の従兄や白龍の力を宿す青年、そして天才を名乗る仲間の幼少時代はきっとこんな風だったのだろうと思わせる、少女とも見紛うようなとびきりの美少年の姿に、思わず彼女の頬が緩む。

「元気にしていた?身体はもう大丈夫なの?」
「うん。有難う……姫様」
「やだ、ヨナでいいのよ!」

己の華奢な身体をぎゅうぎゅうと抱き締めながら喜びを顕にする、尊敬する兄が誰より何よりも大切に護り抜く女性に向かいテヨンは照れ臭そうに問い掛けた。

「ヨナ、ヨナはずっと兄ちゃんと一緒に、風牙に居てくれるんだよな?」
「ーーテヨン、私は」
「皆が言ってたんだ、ハク兄ちゃんがお嫁さんを連れて帰ってきたって。俺、兄ちゃんのお嫁さんがヨナで本当に良かったって、思って……」

けれど、テヨンが期待する返答がヨナの唇を震わせることはなかった。ぴくりと彼女の身体が震え、それからゆっくりと身が離される。
とても嬉しい筈のことなのに彼女から肯定の言葉が紡がれることはない。詰まりは、皆の噂も己の期待も只の噂であり期待に過ぎないと言うことだ。

子供ながらにテヨンはそう察し、少し躊躇いながら自分の姉になるのだと思っていた、白皙の美貌の主を縋るように見上げた。

「ヨナも、ハク兄ちゃんも、また何処かへ行っちゃうのか?」
「……分からない、わ」

不安気に己を見上げる、まだ幼さを残す少年に対しヨナはどうしても否と言い切れなかった。
数日間しか同じ時を過ごさなかったのに何故だか自分を慕ってくれる、ハクの弟。こんなに可愛い子に潤んだ瞳で見詰められたら堪らないーー望みを叶えてやりたくなってしまう。

困ったものだと、己の美形好きを幼馴染に散々揶揄されてきたことを思い出し、ヨナはふと苦笑を洩らす。
そういえば、ハクのことをそういう目で見たことってなかったわ。そもそも美形っていうのとは何か違う気がする。血の繋がりはないとはいえ、弟であるこの子はとびっきりの美少年なのに。

内心首を傾げながら、ヨナは少しでもハクの小さな弟の願いに近付けたならと思う。春までの滞在と考えていたけれど、もう少し延ばせないだろうか。彼が提案するように、業務の一部を移転してでもーー

「……ねえテヨン。ムンドクは何か言っていた?」
「ううん、何も。でも絶対じっちゃんは喜ぶよ!ヨナが兄ちゃんのお嫁さんになってくれたらーー」

瞳を輝かせて懸命に言い募るテヨンに、ヨナはそうね、と笑いながらムンドクの部屋への案内を促す。

「じゃあ、ムンドクの処へお願いに行くわ」
「本当?」
「ええ、本当よーーでも、私はハクのお嫁さんにはなれないの」
「どうして?」

所詮言葉の綾。紡がれた素朴な疑問には答えず、不思議そうな顔をするテヨンに向けてヨナは軽く肩を竦めてみせると悪戯めいた笑顔でこう告げた。

「だから、ハクが私のお嫁さんになれるようムンドクにお願いしてみるわね」





✴︎





からりと襖を開けるとその先に映し出されたのはがらんとした広い室内ーーそれから部屋の奥の障子の隙間から覗く雪景色。
華美な装飾を限界まで削ぎ落とした、広々とした空間。隅々まで手の行き届いた屋敷の庭園を、更にはその先に拡がる街並を一望するよう建築された、簡素に見えて贅を尽くした部屋だ。

胡座をかき障子の隙間から降り積もる雪を眺めていたこの部屋のーー否、屋敷の主は、開かれた襖の間を割って入った彼女の髪と同色の紅を基調とした風の部族の装束を纏うヨナの姿を視界に捉えると、その隻眼を僅かに細め髭で覆われた厳つい顔面に穏やかな笑みを浮かべた。

「これは姫様。旅の疲れが出てお休みになっていると聞き申したが、具合はもう良いのですかな?」
「うん……宴の準備の邪魔をしてごめんなさい。少し良いかしら」
「ははは、ご心配には及ばん。今頃はハクが儂の代わりをしておる」

朗らかな笑顔を見せるムンドクが告げた言葉に、ヨナは一瞬きょとんと瞳を見開き、それから可笑しそうに小さく吹き出した。

「ハクの為の宴の準備を、ハクがするの?」
「左様。まあ此処では良くあることでしてな」

姫様の為の宴でもあります故、奴が働くのは当然のこと。
そう言い切り豪快に笑う、愛情に溢れた彼の祖父へとヨナは改めて向き直りその正面に座す。しゃらり、と軽い衣擦れの音が乾いた冬の空気を震わせた。

「ムンドク、お願いがあるの」
「姫様が儂に?何ですかな」

笑顔のまま問われたヨナは姿勢を正し真っ直ぐに、祖父とも思ってきた初老の男を見据える。己を射抜くような彼女の真摯な眼差しと、紫紺の双眸に宿る意志の光ーー揺らめく紫焔を見出したムンドクもまた正面から、何時の間にか随分と大人びた表情を見せるようになった、孫娘のように慈しんできたヨナの姿を見詰めた。

僅かばかりの沈黙の後、凛とした声音が周囲に響く。

「ハクをーー貴方の孫を、私に下さい」

ヨナの真剣な表情と発せられた言葉に、今度はムンドクが目を瞠る番だった。
ひゃあ、などという妙な歓声がヨナの斜め後ろにちょこんと座っていたテヨンから上がり、一瞬言葉を失ったムンドクの耳朶を擽った。

「姫様……それは、そういった意味だと捉えて宜しいか」
「うん」
「ーーしかし、ハクはとうの昔から貴女様のものでしょうに……」

まさか姫様相手に、年頃の娘を持つ父親の如き気分を味わうことになろうとはーーいや、そもそも儂の孫は娘ではないのだが。

思いも寄らないヨナの『お願い』に気の利いた言葉一つ返せぬまま、高華一の武人と謳われるまでに鍛え上げた自慢の孫である筈の青年に対する、誇らしさと情けなさが入り乱れた感情がムンドクの胸中に去来する。
だがそんな葛藤にも似た彼の心中を知ってか知らずか、ヨナは自嘲気味に微笑んだ。

「ムンドクは今更って思う?でも、私はずっと迷ってた。そんな風にハクを求めてはいけないような気がしていたの」
「どうしていけないんだ?ハク兄ちゃんはヨナのことが大好きだから命懸けで護ってたんだって、だから兄ちゃんがヨナを連れて帰ってきて良かったって皆が言ってる。なのに何でーー」

少し寂し気な色を纏うヨナの言葉を遮るように、横からテヨンが疑問と焦りを滲ませ言い募る。眉を顰めそれを咎めようと口を開き掛けたムンドクを制し、ヨナはちらりと背後を振り返ると紫紺の瞳をやわらかく細め、そうねと笑った。

「私もハクのことが大好きよ。でも、私は何時だってハクに沢山のものを与えて貰ってばかりで何も返せていなかった。それがとても辛くて、嫌だったの」
「そんなこと……」
「でもね」

それからヨナは再びムンドクに向き直り視線を合わせた。髭に覆われて表情は分かり難いけれど、己を見詰める瞳の色はとても暖かく慈愛に溢れている。

沢山の愛情を惜しみなく与えてくれた貴方にも、私は何も返せずにいた。だけど。

「私にも、あの人に与えることができるものがある。それにムンドク、やっと貴方にも恩返しができるわ」
「ーー姫様、それは……」
「うん」

何かを察した様子のムンドクの目に、少し照れたような、けれどとても嬉しそうなヨナの表情が映し出される。何の憂いもない彼女の笑顔を見たのは何時以来だろうかと、彼は懐かしい日々へと思いを馳せた。脳裏に浮かぶのは将軍として登城していた頃の記憶ーー緋龍城を駆け回る幼子達の眩しい笑顔。

「晩夏の前には、ムンドクの曾孫が産まれるわ」
「何と……」
「赤ちゃん?ヨナ、赤ちゃん産むの?」
「ええ」

きらきらと瞳を輝かせるテヨンと、潤んだ双眸を細めるヨナの姿を見遣りながらムンドクが思い描いたのは未だ見ぬ曾孫の姿ではなく、手塩に掛け育て上げた孫の紺青の瞳。

晩夏の前ーー儂が、快晴の夜の海のような深い群青色の瞳と初めて出会ったのも、真夏だった。

「盛夏……それは良い。儂には忘れ得ぬ季節じゃ」

何処か遠い眼差しで、噛み締めるような口調でしみじみと告げるムンドクに、じっちゃんは夏が好きなのか?とテヨンが首を傾げた。
返答の代わりに大きくごつごつとした掌が少年の頭上にぽん、と乗せられるのを眺めながらヨナはぽつりと呟くようにムンドクの科白を反芻する。

「忘れ得ぬ……」
「儂がハクを授かったのも、晩夏の前でしてな。あの日の喜びは何年経っても忘れられません」

授かった、との表現に彼のハクに対する限りない愛情が感じられ、微笑みを浮かべたヨナの紫紺の瞳が知らず潤み、微かに揺れる。

勿論、テヨンを授かった日のことも忘れてはおらんぞと豪快に笑いながら、ムンドクは改めて孫娘とも思い見守り続けてきた、夏には母親になるという白皙の美貌を眺め遣る。
何と尊く美しい笑顔なのだろうかと、知らず息を洩らす彼の脳裏を今は亡き主君の柔和な笑顔が過り、やがてその輪郭が朧と消えていった。





✴︎





「ハク兄ちゃんはヨナのお嫁さんになるんだよな!」

宴の準備も終わり、広間の前の外回廊に適当に腰を下ろし揃って雪景色を眺めていた、ハクとハクの弟分であり現在部族長を務めるテウ、同じ弟分であるヘンデの側に駆け寄り様、無邪気な笑顔で突然テヨンが爆弾を投下した。

「ハク様、嫁って何その憐れな感じ」
「ちょ!俺こんな嫁イヤだ!ヨナさんお気を確かに〜」

申し訳程度に笑いを堪えつつ、揶揄どころではない物言いをする二人に対し返礼とばかりの蹴りを入れ、ハクは顔を引き攣らせながらテヨンへと向き直った。

「へーえ、そりゃあ凄え。ってか誰がンなこと言った?」
「ヨナ!」
「……姫さんかよ」
「兄ちゃん、赤ちゃんが産まれたら俺、ちゃんと面倒見るからな!」

やっぱりあの人に任せるんじゃなかったと肩を落とし、盛大な溜息を洩らすも時既に遅し。更なる爆弾発言にハクの弟分達が此処ぞとばかりに食い付いた。

「えっマジ?ハク様の子供?」
「もしかしてハク様が産むの?」
「あっ、だから『お嫁さん』?」
「ぎゃはは!さっすが雷獣!ハク様ホント万能っすね」
「……てめーら後で覚えとけよ」

取り敢えず弟分達を威圧して黙らせ、ハクはちらりとユンをも凌ぎそうな、今だ幼いけれども端正なテヨンの貌を視界に映す。

非常に不本意ではあるものの、嫁どうこうには触れずに置こう。だがこれは……春か、最悪秋には戻れるのか?
どうせ大方、美形だの美少年だのに滅法弱い姫さんがテヨンの『お強請り』に負けちまったんだろうが。

「……仕方ねえな。おい、若長」

眉を寄せてぼそりと独り言ち、ハクはテウを敢えて長と呼ぶ。

「へ?どしたのハク様ーーあ、もしかしてまた部族長やりたい?いやあ俺、長はともかく将軍って面倒臭いし出来れば今すぐ代わって欲しいんですけど」

へらりと笑うテウの言葉を丸々無視してハクは続けた。

「世話になる代わりに、春になったら儲け話させてやるよ」
「えっ、でもハク様自分の儲けのことしか考えないよね絶対……」

不信感丸出しのテウを一瞥するとハクは少々詰まらなそうに、話し相手は俺じゃねえよと告げ、滲む淡墨の空を見上げる。
一向に止む気配のない粉雪は、風牙の街並を只淡々と無彩色に塗り潰していた。

「ーーまた、賑やかになるな……」

ぽつりと独り言ち、それからハクはゆっくりと紺青の瞳を閉じる。

降り積もる一面の雪が融け、風牙に暖かな風が吹く頃には。
慣れ親しんだ街並に、鮮やかな龍達の色彩がきっと加わる。

艶やかな極彩に溢れる夏の終わりには、またひとつ新しい色が生まれるだろう。


願わくば、その色があの人と同じ輝きを放つものであるといい。



そんなことを取り留めもなく思い、ハクは口元にやわらかな笑みを浮かべた。










『en』
いつまでも僕たちが 笑っていられますように。















ハク生誕祭2015用SS。
一応『GOLD』の延長線上のつもりで。

あっ大遅刻です。何せ書き始めたのが7日というね 笑

誕生日に自分の子供が産まれたらプレゼントになるかなと思ったり。
そもそも誕生日って本人の為のものじゃなくて近親者、特に直系尊属のものだよねえと思ったり。
結局は姫とじっちゃんによる「お父さん!娘さんを僕に下さい( ー`дー´)キリッ」(直訳 笑)な寸劇を書きたかった訳ですけど。



何だかハクが総受ぽくなってしまった……
ま、御祝いだからいっか 笑




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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

こんばんは!すいません、またお邪魔いたします。
このお話を読ませて頂いてから、「夕凪」と「路傍の花2.5」もまた読んで、それからまたこのお話を読みました。うーん、時が満ちたな〜と感慨深くて。良かったねー陛下って、「夕凪」のパパに教えてあげたい^ ^
ムンドク様はずーっと、静かに、こういう時が来てくれる事を待っていたんでしょうねぇ……そして別荘の部屋といい、常に姫様の居場所を作っておいてくれてたのかなと。
ハクほどの男、赤ちゃんの時から、きっとなんとも言えない光を発してたでしょうね。ムンドク様、陰に日向に溢れるほど愛情を注いでたと思います。しょつ中バトルしてたけど。だからハクは姫さんの事をああいう風に愛せたんじゃないでしょうかね。そして反対にスウォンはどうだったのかなーと考えてしまいました。
{あと、ヨナが懐妊したと知ったテジュン&フクチとか考えて、ニヤつきましたよ。絶対皆んな、(あ、そういう事したんだ…したんだな……)とか、わかってたけど、でも改めて想像してそう(≧∇≦) (下世話でスイマセン)}
キキさんの、ハクヨナも勿論ですが、周囲の登場人物のハクヨナ語るお話も大好きです。次のお話、また読めるの、楽しみにしております〜!

Re: No title

ブランシュさん!いつも有難うございます(*>ω<*)
わわ、以前の話も繰り返しお読み頂いて、有難いやらお恥ずかしいやら。
あっ密かに「夕凪」を受けて書いたのでそう仰って貰えて凄く嬉しい(*ノ∀`*)
ムンドク様は、絶対に姫様の居場所を作って待っているんじゃないかなと思います。ハクヨナの関係性が主従のままでも恋仲になってもその辺は問わなさそう。
ムンドク様の溢れるほどの愛情を受けて育ったからこそ、ハクは姫の事をああいう風に愛せたのではというお話、私もそう思います!あーやっぱりムンドク様素敵(ᐥᐜᐥ)♡ᐝ
スウォンは、勿論愛情は受けていたのでしょうけど王兄の嫡男としての期待に応えるべく背伸びせざるを得なかったような気もしますね。子供らしい我儘や甘えを許されなかったのかも。だからああやって本心を隠して常に笑っていられるのかな、演じ続けた役が本物になったのかな、と。
ヨナが懐妊したと知ったテジュン&フクチ!あっニヤついてそう。そして変な妄想しそう!
(あ、そういう事したんだ…したんだな……)←物凄く言いそうです!その頃のテジュン様、30近いと思いますが……何て残念風味な!
周囲の登場人物がハクヨナを語る話、需要なさそうと思っていただけに好きと言って頂けて嬉しいです。調子こいてまた書きそう〜(*-∀-*)ゞ
今は、半年近く書こうかどうか迷ってた話を書いてます。姫時代になりますが、またお付き合い頂けましたら幸いです。

No title

ハクがお嫁さん……!!
いやあの、うん、ヨナちゃん、せめてお婿さんあたりで……(笑)
(旦那様とか端から望まないあたりww)
相変わらずヨナちゃんがイケメンすぎて素敵ですわぁ……!(*/ω\*)

風の部族大好きなので、あそこ絡みの話はホント幸せになります。
テヨン可愛い~!あれは部族あげてメロメロしちゃいますよね!
あの子は育ったらかなりの美人さんになるんだろうなぁ。
あの歳にして、家事の腕前もかなりのもののようですし、
きっといいお嫁s……あ。(察し)

ムンドクがあそこでハクとの邂逅を思い出して紡ぐ言葉のひとつひとつに
ひどく胸を打たれて、そうだったらいいな、きっとそうだったんだろうな、と
とても幸せな気持ちに満たされました。
ハクの出生については相変わらず靄に包まれたまま分かりませんが、
ひとつはっきりと分かっていることは、ムンドクの元で育まれたということは
ハクにとって何よりの僥倖だったのだな、ということ。
ムンドクの度量の広さと、まるっと皆家族!な風の部族をみるにつけ、
心からそう思います。

「新しい色」に愛しい人の色を望むのはいつの世も互いの望みですね。
ヨナちゃんの緋色の髪は緋龍王絡みなだけに遺伝は難しそうですが、
二人とも瞳の色だって印象的ですから上手いこと二人の色が
混ざり合えばいいのよー。(*´艸`*)

しかしこれ、前(妊娠発覚)も後ろ(四龍来訪~懐妊)も
気になります!
えっ?これ続きありますよねぇ?伏線色々あったし。
ある?あるよねぇ?|ョ゚д゚*)チラリン

Re: No title

みちるさんコメント有難うです〜ヾ(⌒(ノ*•ω•*)ノ♡

ハクがお嫁さんです!
ハクさんを嫁扱いする姫が書きたかったのです!
婿といえば婿なんですけど、企画モノですしここは敢えて花嫁に←
あっ姫に嬉しいお言葉有難うです!姫をイケメンに書けて良かった〜(*ノ∀`*)

風の部族私も大好きです!原作読むのもss書くのも楽しい(*≧∀≦)
テヨン、やばい位可愛いのに結構少年ぽい言葉遣いなのがかなりツボです!原作で6歳ですよね。料理得意な小1男子(美少年)!ほんと将来楽しみです。言うまでもなくいい嫁ry

今回いつにも増してムンドクさまに夢見てる感じになっちゃいましたが、そのように言って頂けて本当に嬉しい♡
ムンドクさまの元で育まれたということは ハクにとって何よりの僥倖だったとのお言葉、その通りだと私も思います!ムンドクさまも含めた風の部族の人々の愛情を受けて育ったからこそ、真っ直ぐで、愛情に溢れた人間に成長したのかなと。

みちるさんが仰る通り、姫の髪の色は遺伝しないでしょうから、瞳の色は姫と同じであって欲しいと願っています。
あっ、上手いこと二人の色が 混ざり合えば素敵ですね(੭ु ˃̶͈̀ ω ˂̶͈́)੭ु⁾⁾

この話の前後ですか?あっ一応脳内には 笑
密かにタイトルも決まってたりしますので、そのうちに。
もしその時覚えていて下さったら、またお付き合いくださいませ〜(*´╰╯`๓)♬

No title

珍しいとかさんざん言われたから、コメントしに来にくかったわい(-_-;)

凄くいいお話だったから、「素敵♡」って伝えたかっただけだったのに、何でサイコフレームの話になるのか(笑)。
私はヨナを語っちゃだめなのか(笑)。

キキちゃんの姫様、今日も漢前!!
うん。結構ありそう嫁にくれ展開!
風牙の描写が美しいのです(*^_^*)
子供は、夫婦が産むけど、みんなの子だよね。
みんなに囲まれて、きっと健やかな子に育つでしょう。
素敵なお話を読ませてくれてありがとう。

私はどうしたら感想が上手く書けるようになるんでしょうね??
もっとスッキリ読後感を伝えて、キキちゃんのことを褒め称え、えっこらよっこら持ち上げまくりたいのですけど!?

Re: No title

笙子ちゃん!コメント有難う〜嬉しくて泣ける(´•̥̥̥ω•̥̥̥`)♡

あんだけいいお話を作る笙子ちゃんにそんなこと言われたら嬉し過ぎてどどどどうしよう:_(;゚。3;」∠ )_:
待って誤解よ!私は笙子ちゃんとヨナ語りたいんだよ!でも何故か話題が逸れてしまう(TωT)
ほんとごめんね……

うちの姫に勿体無いお言葉有難うです♡漢前って言って貰えるのめちゃめちゃ嬉しい〜
えっありそうです?原作で嫁にくれ展開やってくれたら皆さん召されちゃうね!勿論私も 笑

ああ……そうだね子供はみんなの子だよね。
風牙なら尚更だね。みんなに愛されて育てばきっと両親のように真っ直ぐで愛情溢れた人間になるよね。
こちらこそコメント本当に有難う。特に上記の子供の話は心に沁みたよ(*´ω`*)

感想を上手くって 笑
いや今回物凄く嬉しかったんですけど。
褒め殺しとかヤメテ!何も出ないし!
読んでくれたこと自体が有難いんだから、一言「読んだよ!」って教えてくれるだけで幸せなのよ〜
プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

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