スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スウォン→ハク(→ヨナ)SS 『nightbird』 スウォン独白。スウォハクつっても恋愛話ではありません。


宵闇に溶ける見慣れた己の寝室の、独り寝には些か大き過ぎる寝台の隅に腰を下ろし、窓際に置かれた燭台の灯火をぼんやりと眺める。

時折微かに揺らめく朱い蝋燭の炎を何とはなしに見詰めていると、ふと懐かしい従妹の長く燃えるような髪を思い出す。

(ーーああ、今では……短くなってしまっていたな)

僅かに瞼を下ろし、短くとも炎のように揺れる彼女の髪を脳裏に浮かべてみる。

(違う)

瞼の奥にぼやけて見える癖のある少女の髪のいろーーだがそれはすぐに掻き消され、全く違ういろに上書きされた。
それは深い、漆黒にも見紛うような紺青。
朧気な世界の中でたったひとつ、鮮烈な印象で私を捉え続ける、青醒めた月の光を微かに映し出した澄み渡る夜空のような双玉。

真っ直ぐに私を見据える鋭い眼差しの奥に揺らめく焔のいろが見える。そうだーーこれは彼の、憤怒の光のいろだ。

「……ハク、貴方はーー何より大切な存在を、手に入れましたか?」

ぽつり、と瞼の奥に鮮明に映る黒髪の青年に向かい問うてみる。無論、返答などあるはずもない。
ひとり溜息を洩らし何とはなしに苦笑した私は燭台から視線を外し、ごろりと寝台の上に寝転がった。

朧気な記憶の中で笑う優しい人々。まるで従妹の好んでいた絵巻物の世界に紛れ込んだかのようなふわふわと覚束ない色彩と輪郭の彼らの中に、不意に紛れ込んだ異質な存在が鮮明に浮かび上がる。
濡れ羽色の髪、瑠璃よりも深い藍の瞳。冷え冷えと冴え渡るいろを纏う彼の印象はそれとは裏腹な、鮮烈な真紅。

「ハク」

真っ直ぐに私を、その苛烈な眼差しで見据える幼馴染の幻に向かい呼び掛ける。

「彼女の傍に、貴方はいるのですね」

私の言葉に応えるように彼は微かに笑った、ような気がする。これは私の中の幻影に過ぎないと解っていても、何処かで彼と繋がっているような気がして己のこころが沸き立つのが感じられた。

それから、ハクに当てていた焦点を少しばかり拡げてみる。きっと彼の隣に佇んでいるだろう緋い髪の少女の姿を求めて。
だが、見慣れていたはずの彼女の姿は蜃気楼の如く。

「……そんな、ものですかね」

優しい思い出と温もりをくれた従妹の姿さえも、私には希薄な幻想でしかないのだ。
ーーそう、私にとってすべてはそんなものだ。

(必要ないのだ、彼以外は)

胸中で独り言ち、私は閉じていた瞼を上げた。途端掻き消える彼の幻影と視界に映し出される見慣れた天蓋。毎日目にしているはずの広い天蓋の装飾を、多分私は誰かに問われたとしても思い描くことはできない。
私にとって、他人とはそんな存在なのだ。

「……ハク、私は貴方から貴方の最も大切な存在を奪うことはできなかった」

溜息を洩らし密かに笑う。これは自嘲なのか、それとも安堵からくるものなのかーー自分でも判別がつかない。

ずっと昔から知っていた。ハクの中に従妹の存在が住み着いていることを。
だが、彼はそれを決して表沙汰にはしようとせず、私が王位に就くために彼女と婚儀を挙げろとまで進言してきた。

ハクの思いを嘘偽りだとは思わない。彼のこころに宿る彼女への思慕とは別に、私を王位にと願いその隣に彼自身が並び立つという望みもまた彼の本心であったのだと理解している。

私は、確かに嬉しかったのだ。
ヨナを私の妃にとのハクの言葉を聞いた私は、戸惑う姿を演じながら、そしてそれが現実とはならないだろうと諦観しながらもこころの底で歓喜に沸いていた。


ハクは、ヨナではなくこの私を選んだのだと。


「……制御のきかぬ感情ほど、厄介なものはありませんね」

彼の言葉のまま行動すれば良かったのだ。
それだけで、私の望みも彼の願いも叶えられたのだ。

だが、そうはならなかった。

叔父が私を認めなかったから?ハクを後継者としようという節があったから?父のことがあったから?

違う。

ハクが、こころで血を流しながら私の傍に在るだろうからーーだ。

この世でたったひとつ、私が欲した存在。唯一手に入れたかった者が私と同じだけの欲と執着心で私に向き合うことは決してない。

(そんなものは、いらない)

別の存在を胸に宿しながら、それを決して見せることはないままに誰よりも私の傍に控えるなどと。

「貴方は、貴方が真に護りたい者を護ればいい」

視界の隅でちらつく蝋燭の炎が鬱陶しい。淡々としているはずの感情が不意にざわつくのを感じ、私は寝台から立ち上がり窓辺に置かれた燭台へと向かった。
ざらざらとした不快感に眉を寄せ、揺らめく炎を一気に吹き消すと独特の香気を残し宵闇の中に仄かな朱は掻き消える。

「……さよなら、ハク」

消えた炎に向かいぽつりと告げる。返答も、彼の幻も今度は現れることはなかった。


ーー私達は、何を間違えてしまったのだろう。


彼が、その胸の奥に従妹の存在を宿さなければ良かったのか。
(それを、私にどうにかすることはできなかった)

彼が、女であれば良かったのか。それとも私が女であれば良かったのか。
(それでは、私達は並び立てない)

私達は、出逢わなければ良かったのか。
(それは今の自分を全否定することだ)


詮無きことを考えれば考えるほど感情は漣立ち、その揺らぎはやがて熱量となって全身を支配する。
何て、鬱陶しい。

不快な熱を冷まそうと、普段用もなく顔どころか姿すら見ることはなかった伽の女でも呼ぼうかと一瞬扉へと顔を向けたが、どうせ目にすれば興醒めするのだ。それは彼ではないと苛立つのだ。
そんな自分が容易に想像できてしまい、私はかぶりを振り再び寝台へと身を沈めた。

このまま、眠ってしまおう。

寝台の上で横を向き、背を丸め身を屈める。
希薄なこの世界の中で、確かなものは自分自身と、抱え込んだ彼の幻影だけーーこうしていると、本当にそんな風に思えてしまい私は今度こそ自嘲の笑みを洩らした。

「さよなら」

おやすみなさい、の代わりにこの世界の何処かに生きている幼馴染に告げる。

「……また、逢いましょう」

これは、私のこころの中に住み着く幻影に向けて。


このまま眠りに墜ちれば、夢の中で逢えるだろうか。
優しく懐かしく、現実よりも余程鮮明な思い出の中の彼に。


逢いたい。
触れたい。
言葉を、こころを通わせたい。

たったひとつ、私をこの世界に繋ぎ止めるーー君に。



目を閉じると、やがて遠くで空を切り裂くような甲高い音が聴こえる。

(ああーーグルファンの声だ)



そう思いながら、私の意識は闇に溶けていった。















『nightbird』
さあ目を閉じよう シーツは暖かい















特にBLのつもりはありませんがどうか。
執着心と独占欲、反目と対立。そしてお互い影響し合う関係が非常に滾るのです……
私は恋愛軽視型なのでCPとは違うと思ってますけどホモくさかったらすんません(土下座)




スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

月桜キキ

Author:月桜キキ
月桜キキと申します。
数年振りに二次創作の世界に出戻って参りました。普段はしれっと会社員やってます。

暁のヨナ、聖闘士星矢(無印)を中心に、他ジャンルも時々。
NLBL混在しますのでご注意!

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。